警察VS特攻服の中学卒業生 刺繍はイマドキ

卒業式シーズンを迎え、岡山県警は駅前の警戒態勢を固める準備を進めている。というのも、岡山の一部では中学校の卒業式当日、卒業生らが暴走族風の変形学生服や「特攻服」を着て集まる、習慣があるためだ。奇妙な“風物”として地元では知られているが、県警は昨年から本腰を入れて排除に乗り出した。
県警本部長が通達
平成30年3月13日午後、JR岡山駅(岡山市)の前にある「桃太郎像」に、白や紫の特攻服や刺繍(ししゅう)を施した変形学生服を着た少年少女が続々と集結していた。彼らはこの日中学校を卒業したばかりの卒業生。岡山市だけでなく倉敷市など周辺市町からもやってきて、めいめいに記念撮影に興じていた。
年に1度の「記念」として理解を示す声も一部にある一方、苦情も多く、「けんかをしている生徒がいて怖かった」「威圧感があり、避けて通っている」などの声が県警に寄せられていた。
そこで県警は昨年、態勢を強化。本部長名の「不良行為少年の補導について」という通達で、公共の場所で特攻服やそれに類する服を着て、たむろ、徘徊(はいかい)するなどの「不安を覚えさせる行為」を補導対象に追加した。
そして卒業式の行われた3月13日午後、卒業生らが来る前に桃太郎像を取り囲み、“集会”を封じ込めた。この日、通達に基づいて補導されたのは延べ19人だった。
「縁起が良い」との説
ある捜査関係者は「岡山は少年犯罪が多い。犯罪抑止のためにも風紀の乱れをなくすのは大切」と指摘。県教委も昨年、特攻服などで駅前に集まらないよう各中学校に通知した。
岡山県では今年、新型コロナウイルスの感染拡大で来賓を招かないなど規模は縮小するものの、中学校の卒業式は行われる予定。県警は多くの中学校で卒業式が行われる13日に、昨年同様の態勢で桃太郎像を囲み、集会を防ぐ構えだ。
なぜ卒業生らは特攻服を着て駅前に集まるのか。
卒業式の「晴れ舞台」として、県内で最も人通りが多い岡山駅前で、岡山を象徴する「桃太郎」像が選ばれた、というのがまずあるようだ。
さらに、「警察に止められずに像に上れたら縁起が良いとされる」(県警の担当者)といった“伝説”があるほか、テレビ番組では、「集会は対立する中学校同士が最後に仲直りをするための場」と報じられたこともある。
感謝の気持ちを表現
そんな中、変形学生服や特攻服に「マイルド化」も進んでいる。
変形学生服、特攻服の製造・販売を手掛ける「コーソ」(岡山県倉敷市児島)店長の高祖隆史さん(49)は「最近の変形学生服では感謝の気持ちを示すメッセージの刺繍が多い」と話す。
購入者に依頼されて縫い込む刺繍には「女手ひとつで育ててくれたママ 本当に感謝しています」「お世話になった先生へ 最愛なる親へ ありがとう」などのメッセージが目立ってきているという。
高祖さんは「最近の親子は昔に比べて仲が良い。『自分が卒業式に着られなかったから、子供に着せたい』と子供の卒業記念に注文する親もいるほどです」と打ち明ける。
とはいえ、変形学生服や特攻服の集団が周囲に威圧感を与えてしまうのも確か。県警は「不必要に集まらないように」と呼びかけている。