新型コロナウイルスをめぐり、首都・東京で「爆発的患者増大(オーバーシュート)」が発生する危険性が高まっている。3月31日には過去最多78人の新たな感染が判明した。大阪府でも同日、これまでで最も多い28人の感染が判明した。感染経路不明のケースも増えている。安倍晋三首相は「緊急事態宣言」を発令するのか。こうしたなか、「未知のウイルス」に立ち向かう人材として、生物・化学兵器への対処能力を高めてきた自衛隊に期待する声がある。集団感染が発生した英国国籍のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応では、延べ約2700人の自衛隊員が投入されたが、一人の感染者も出さなかった。安全保障に精通する評論家の江崎道朗氏が考察した。◇ 北朝鮮が公式に「核兵器の保有宣言」を行った2005年当時のことだ。在日米軍は大変な緊張感に包まれていた。在日米軍を日本列島にくぎ付けにするため、北朝鮮が日本に対して何らかの攻撃を仕掛けてくるかもしれないとの懸念があったからだ。 攻撃というと派手な軍事攻撃を思い浮かべるかもしれない。だが、実際に想定されていたケースの一つが、「天然痘患者を密入国させ、山手線で都内を回らせる」ことであったという。天然痘は飛沫(ひまつ)や接触で感染し、7日間から2週間の潜伏期間があるので、気づいたときには都内全域に感染が広がっていることになる。しかも致死率が20%以上だ。 実は、韓国でもその危険があったことから在韓米軍の軍人たちは04年から天然痘のワクチン接種を受けていて、感染拡大しても活動できるように準備をしていた。 問題になったのは日本だ。日本で天然痘が大流行したら在日米軍の機能も大幅に低下してしまい、いざというとき、北朝鮮や中国の軍事行動を抑止できなくなってしまう。 そこで、こうした生物兵器などによる「攻撃」や「事故」に対応する日本の能力を高めておく必要があった。 「化学(Chemical)」「生物(Biological)」「放射性物質(Radiological)」「核(Nuclear)」「高威力爆発物(high yield Explosive)」による攻撃や事故に対する、こうした危機管理能力と被害管理能力を総称して「CBRNE(シーバーン)対処能力」という。 米海軍のアドバイザーを務めていた北村淳博士によれば、この「シーバーン対処能力」向上のために05年から09年にかけて日米合同で合同机上演習などを実施し、さまざまな攻撃や事故に対する危機管理を日米両国が連携してどのように進めるのか、具体的に協議したという。
新型コロナウイルスをめぐり、首都・東京で「爆発的患者増大(オーバーシュート)」が発生する危険性が高まっている。3月31日には過去最多78人の新たな感染が判明した。大阪府でも同日、これまでで最も多い28人の感染が判明した。感染経路不明のケースも増えている。安倍晋三首相は「緊急事態宣言」を発令するのか。こうしたなか、「未知のウイルス」に立ち向かう人材として、生物・化学兵器への対処能力を高めてきた自衛隊に期待する声がある。集団感染が発生した英国国籍のクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」の対応では、延べ約2700人の自衛隊員が投入されたが、一人の感染者も出さなかった。安全保障に精通する評論家の江崎道朗氏が考察した。
◇
北朝鮮が公式に「核兵器の保有宣言」を行った2005年当時のことだ。在日米軍は大変な緊張感に包まれていた。在日米軍を日本列島にくぎ付けにするため、北朝鮮が日本に対して何らかの攻撃を仕掛けてくるかもしれないとの懸念があったからだ。
攻撃というと派手な軍事攻撃を思い浮かべるかもしれない。だが、実際に想定されていたケースの一つが、「天然痘患者を密入国させ、山手線で都内を回らせる」ことであったという。天然痘は飛沫(ひまつ)や接触で感染し、7日間から2週間の潜伏期間があるので、気づいたときには都内全域に感染が広がっていることになる。しかも致死率が20%以上だ。
実は、韓国でもその危険があったことから在韓米軍の軍人たちは04年から天然痘のワクチン接種を受けていて、感染拡大しても活動できるように準備をしていた。
問題になったのは日本だ。日本で天然痘が大流行したら在日米軍の機能も大幅に低下してしまい、いざというとき、北朝鮮や中国の軍事行動を抑止できなくなってしまう。
そこで、こうした生物兵器などによる「攻撃」や「事故」に対応する日本の能力を高めておく必要があった。
「化学(Chemical)」「生物(Biological)」「放射性物質(Radiological)」「核(Nuclear)」「高威力爆発物(high yield Explosive)」による攻撃や事故に対する、こうした危機管理能力と被害管理能力を総称して「CBRNE(シーバーン)対処能力」という。
米海軍のアドバイザーを務めていた北村淳博士によれば、この「シーバーン対処能力」向上のために05年から09年にかけて日米合同で合同机上演習などを実施し、さまざまな攻撃や事故に対する危機管理を日米両国が連携してどのように進めるのか、具体的に協議したという。