「生きているうちに我が家に」 県土地整理…再建できぬ仮設住民 熊本地震4年

2016年4月の熊本地震からまもなく4年。自宅を失った被災者が暮らす仮設住宅にはピーク時約2万世帯が入居していたが、5月には約850世帯まで減る見通しだ。しかし、このうち熊本県益城(ましき)町の仮設住宅などで暮らす56世帯147人(3月末)は元の自宅の土地が県の土地区画整理・道路拡幅事業にかかり、いつ自宅を再建して仮設を出られるか見通しが立たない人もいる。長引く避難暮らしで体を壊した高齢者は「何とか生きているうちに」と祈る思いでいる。
「区画整理事業で動けんとですよ」。3月末時点で74世帯159人が暮らす益城町木山の木山仮設団地。林清治さん(80)はまひが残る右手足をさすりながら眉間(みけん)にしわを寄せた。16年4月16日の本震で自宅が全壊。仮設で暮らしてきたが18年12月に脳梗塞(こうそく)を発症し後遺症が残った。
地震以前は住み慣れた戸建ての家で気兼ねない暮らしだったが、プレハブ仮設は物音などで隣家に気を使う。高齢の身に環境の変化はつらく、心臓病を患う妻美知子さん(79)も19年5月にペースメーカーを着けた。早く自宅を再建したいが、自宅の土地が区画整理事業にかかっていて思うようにいかない。
事業完了8年後
益城町は地震で住宅の6割が全半壊。壊滅的被害を受けた町の中心部28・3ヘクタールに140億円を投じて道路や公園、商業地、住宅地を整備する熊本県の土地区画整理事業は、蒲島郁夫知事が掲げる「創造的復興」の目玉の一つだ。
しかし、事業の完了目標は28年3月末でその間の工程は不透明。林さんは元の土地と県が整備する宅地を交換する「換地」に応じる意向だが、いつ宅地の地盤改良が終わって家を建てられるか県に尋ねても分からず途方に暮れる。仮に事業完了を待つ羽目になれば林さん夫妻はその頃、90歳近い。「とにかく早く家を建てたい」。願いは切実だ。
「立ち退くなら条件提示」
県との交渉が難航している被災者もいる。自宅の土地が道路拡幅事業にかかっている男性(70)は「県の担当者に『(立ち退きに)応じてくれるなら条件提示する』と言われたが、条件も分からず『はい』と言えるか」と憤慨。県によると地権者319人のうち交渉が難航しているのは60人。交換する土地が元の土地より20~30%狭くなる人もいて条件面などで折り合いがついていないという。
熊本地震の復興住宅は3月末までに全1715戸が完成。県は被災者の恒久的住まい確保にめどがついたとしているが、その陰に林さんたちがいる。
県の担当課長は「土地はそれぞれ広さや形状が異なるので、換地の条件も人によって変わる。創造的復興のシンボルになるよう丁寧に説明して理解を求めていくしかない」と話している。【山本泰久、城島勇人】