帰国者の水際対策、「自覚」頼み ホテル・レンタカー利用も急増

新型コロナウイルスをめぐり、入国拒否の対象国から帰国した日本人への空港検疫でのウイルス検査で、感染が確認されるケースが続いている。4月1日以降の約3週間で累計感染者数は60人から130人と倍以上に増加した。4月初旬までは検査結果が判明するまで政府手配のホテルなどに待機してもらっていたが、待機先が不足したため「自宅待機」も容認。公共交通機関の利用自粛も求めるが、あくまで「要請」にとどまる。各帰国者の「自覚」に頼るしかない水際対策に懸念の声も出ている。
「ひょっとしたらここで感染するかもしれない」
入国拒否対象のタイから長女(5)を連れて今月、羽田空港に帰国した無職の男性(36)は、検疫関連書類を提出する際の行列をこう振り返った。並んでいたのは5分程度だったが、列の中にはせきをしている人もおり、ピリピリとした空気が漂っていたという。
帰国者に対する検疫は主に、成田、羽田、関西の3空港で行われており、到着便が8割に減便された今も、多い日で1千人近くが検疫を受けている。
帰国者は4月初旬までは、検査結果判明まで政府が手配するホテルや空港内の施設に待機してもらっていた。だが、入国拒否対象国の拡大で待機先が不足したため、政府が自宅待機も容認する方針に転換。帰国者は空港で感染の有無を確認するPCR検査を受けた後、せきや発熱などの症状がなければ、検査結果を待たずに帰宅できるようになった。ただ、検査結果が陰性でも、帰国後2週間は公共交通機関の利用自粛と、外出せずに自宅などに待機することを求めた。
一方、症状がある場合は検査結果が出るまで空港内などでの待機が求められることもある。
症状のなかった男性は空港を離れることが許されたが、電車やバスだけでなくタクシーも利用できないため、事前に予約していたレンタカーで山梨県内にある親族所有の建物に移動、待機生活を送った。
「1日半かかる」といわれていた検査結果がメールで届いたのは男性が5日後、長女は6日後。ともに陰性だった。メールには変化があった場合は自ら相談するよう書かれていたが、その後、体調を尋ねる連絡は来なかったという。
「必要最低限のチェックだけで、あとは自己責任に委ねられている。待機場所や移動手段の確保に困る人もいるだろうし、ばれないと考えて新幹線やバスを使う人もいるだろう。万一陽性の人がいれば感染を広げてしまいかねない」。男性は疑問を口にする。
厚生労働省の担当者は「検疫官から帰国者に感染防止の趣旨を強く説明し、公共交通機関を使わないよう求めている」と話す。東京医科大の濱田篤郎教授(渡航医学)は「ウイルスは既に蔓延(まんえん)期に入っていると考えられ、『重症化した人をいかに救うか』が重要になっている。帰国者一人一人の自覚ある行動が求められている」と指摘する。

2週間の待機が求められる入国拒否対象国からの日本人帰国者。自宅以外ではホテルの利用が有効だが、既に満室だったり、宿泊を断られたりすることも。公共交通機関の利用自粛を要請されているため、レンタカーの利用も急増。帰国者専用のハイヤーを用意するタクシー会社もある。
1フロアを丸々、帰国者専用にして受け入れている羽田空港近くのホテル「羽田イン」では、4月以降に問い合わせが殺到し、満室が続く。成田空港近くの「センターホテル成田1」も、帰国者専用のフロアを用意。担当者は「満室とまではいかないが、予約が増えている」と話す。
ただ関係者によると、帰国者の予約を断るホテルや新規予約を全て停止しているホテルもあり、帰国者が滞在先に困るケースもあるという。
タクシーも使えないためレンタカーの需要が急増。成田空港にあるトヨタレンタカーによると、「利用者のほとんどが帰国者」。羽田空港の日産レンタカーも帰国者の利用が増え、4月に入って例年の利用者の2倍の利用があるという。
こうした中、帰国者向けのサービスを新たに展開する企業もある。観光タクシー業を手掛ける「トラン」(東京)は、専用ハイヤーを用意し、帰国者の送迎サービスを開始。1日の最大利用可能数は100人。担当者は「PCR検査の結果が出る時間が読めないため、配車漏れがないよう、細心の注意を払っている」と万全の体制を強調した。