きっかけは「もう少し静かにして」道路族との8年戦争、ついに法廷へ「悪魔のように誹謗中傷された」

「もう少し静かにしてくれませんか」と一言注意したばかりに、8年間にわたって近隣から嫌がらせを受けている主婦がいる。 道路で何かをすることを好み、近隣に迷惑をかける道路族の親と子から「変なおばさん」「ゴキブリ!」と呼ばれ、睨みつけられ、卑猥な言葉をかけられるように……。さらに、親からのいじめがエスカレートし、現在は民事で賠償請求して争っている女性だ。 新型コロナウイルスによる休校措置の影響で、道路で遊ぶ子どもたちが増えている。新興住宅街の道路やマンションの共用部分で発生し、社会問題化している「道路族問題」の、8年戦争の核心に迫ったーー。(ルポライター・樋田敦子) ●新興住宅街の12世帯 事の発端は、2012年の集会だった。京都府に住むパート主婦の角谷綾子さん(45歳、仮名)は、09年に新居に引っ越し、近隣の騒音問題に悩まされ続けていた。 角谷さんの家は、袋小路のコの字を取り囲むように12世帯が建てられた新興住宅街にある。隣の家との距離は70cmほど。その密集地に、各世帯がほぼ一斉に入居し、ほとんどの家には未就学児がいた。 数年のうちは、遠慮しながら暮らしていたが、子どもは成長するにつれ、不動産会社が所有する幅6mほどの私道で遊ぶようになった。 「節度を持って遊んでいるときは良かったのですが、そのうちに短くて昼2時間、夕方2時間の、1日4時間と長時間になり、友達を連れてきて遊んでいることもあり、自宅前の道路を占拠するようになりました。我が家の長男は、少し年上のこともあって、公園で遊んでいたので、道路遊びには加わらないでいました」 そう角谷さんは述懐する。 毎日、最低でも5人以上の子、多いときには20人ほどの親子が集まり、子どもたちは道路でかくれんぼや鬼ごっこをする。角谷さんの家は、オープン外構。道路や隣家との間に壁をもうけていないので、庭に入り込んできて、花壇の花をむしる。ボールが投げ込まれ、丹精込めて育てた花をなぎ倒す。庭に置いていた雪だるまのオブジェは壊されて道路に散乱した。 またある日はデッキブラシを振り回しチャンバラごっこをして、人に当たりそうになるーー。そんな被害は365日続いた。 子どもたちが遊んでいる間、母親たちは話に夢中で、子どもを一切注意しない。公園は徒歩2分ほどのところにあるのに、決まって遊び場は、道路だった。 ●あやうく子どもをひきそうに 家の前の私道は、住民の車が出入りする。加えて配送車、郵便配達のバイクも。入ってきた宅配便の運転手は、飛び出してきた子どもを、危うく轢きかけたこともあった。角谷宅を訪れた友人は、車の周りで子どもたちが遊ぶので、怖くてバックもできずに小刻みに回転しながら、道を出ていくしかなかったという。
「もう少し静かにしてくれませんか」と一言注意したばかりに、8年間にわたって近隣から嫌がらせを受けている主婦がいる。
道路で何かをすることを好み、近隣に迷惑をかける道路族の親と子から「変なおばさん」「ゴキブリ!」と呼ばれ、睨みつけられ、卑猥な言葉をかけられるように……。さらに、親からのいじめがエスカレートし、現在は民事で賠償請求して争っている女性だ。
新型コロナウイルスによる休校措置の影響で、道路で遊ぶ子どもたちが増えている。新興住宅街の道路やマンションの共用部分で発生し、社会問題化している「道路族問題」の、8年戦争の核心に迫ったーー。(ルポライター・樋田敦子)
事の発端は、2012年の集会だった。京都府に住むパート主婦の角谷綾子さん(45歳、仮名)は、09年に新居に引っ越し、近隣の騒音問題に悩まされ続けていた。
角谷さんの家は、袋小路のコの字を取り囲むように12世帯が建てられた新興住宅街にある。隣の家との距離は70cmほど。その密集地に、各世帯がほぼ一斉に入居し、ほとんどの家には未就学児がいた。
数年のうちは、遠慮しながら暮らしていたが、子どもは成長するにつれ、不動産会社が所有する幅6mほどの私道で遊ぶようになった。
「節度を持って遊んでいるときは良かったのですが、そのうちに短くて昼2時間、夕方2時間の、1日4時間と長時間になり、友達を連れてきて遊んでいることもあり、自宅前の道路を占拠するようになりました。我が家の長男は、少し年上のこともあって、公園で遊んでいたので、道路遊びには加わらないでいました」
そう角谷さんは述懐する。
毎日、最低でも5人以上の子、多いときには20人ほどの親子が集まり、子どもたちは道路でかくれんぼや鬼ごっこをする。角谷さんの家は、オープン外構。道路や隣家との間に壁をもうけていないので、庭に入り込んできて、花壇の花をむしる。ボールが投げ込まれ、丹精込めて育てた花をなぎ倒す。庭に置いていた雪だるまのオブジェは壊されて道路に散乱した。
またある日はデッキブラシを振り回しチャンバラごっこをして、人に当たりそうになるーー。そんな被害は365日続いた。
子どもたちが遊んでいる間、母親たちは話に夢中で、子どもを一切注意しない。公園は徒歩2分ほどのところにあるのに、決まって遊び場は、道路だった。
家の前の私道は、住民の車が出入りする。加えて配送車、郵便配達のバイクも。入ってきた宅配便の運転手は、飛び出してきた子どもを、危うく轢きかけたこともあった。角谷宅を訪れた友人は、車の周りで子どもたちが遊ぶので、怖くてバックもできずに小刻みに回転しながら、道を出ていくしかなかったという。