新型コロナウイルスの感染拡大に伴う休業要請について、毎日新聞の都道府県への取材に対し、香川県などは7日以降、「継続しない」と全面的な解除方針を明らかにしたものの、多くの自治体では限定的な解除にとどまった。飲食店への短縮営業要請を継続するケースも目立ち、休業要請が続く都道府県は過半数に上る。7日は休業要請が解除された地域で、久しぶりの人出も見られたが、活気を取り戻すには時間がかかりそうだ。【川原聖史、鶴見泰寿、柳澤一男】
特定警戒都道府県に含まれる大阪、京都府と石川県は、飲食店などへの休業要請を現状のまま延長するとした。うち、大阪は要請解除の府独自基準を策定し、15日に解除の可否を判断する見通し。延長を決めた石川は「感染拡大に歯止めがかかっていない」と県内で感染者数が減少していない状況を理由に挙げた。京都の西脇隆俊知事は5日の記者会見で「取り組みを続けて確実に出口に向かいたい」と強調した。
兵庫県は特定警戒に指定されていることに加え「依然として感染者が増えている」として引き続き休業要請を続けるが、宿泊施設については7日に解除した。関西の奥座敷として知られる有馬温泉(神戸市北区)ではこの日、旅館4館が営業を再開。創業約800年の老舗旅館「陶泉(とうせん) 御所坊(ごしょぼう)」にも、宿泊客や日帰り温泉の利用客が早速訪れた。
同旅館では混雑時、客に温泉の利用時間をずらしてもらうなどの感染防止策をとった。フロントには飛沫(ひまつ)を防ぐアクリル板も設けた。神戸市内から妻と日帰り入浴に訪れた会社役員の男性(51)は「自宅での『自粛疲れ』を癒やしに来た。対策もされており、安心して湯につかれた」と話していた。有馬温泉観光協会長で同旅館の金井啓修社長は「緊急事態宣言の延長もあり、普段のにぎわいに戻るのは時間がかかるだろう。徐々に再開する旅館や店が増え、観光客を安心して迎えられるようにしたい」と語った。
また、特定警戒の近隣県の中には、人の流入を懸念するケースも。奈良県の荒井正吾知事は県の5日の対策本部で「近隣大都市でもまだまだ感染者が多い。措置を緩めると一気に感染拡大となる懸念がある」としており、休業要請を31日まで続ける。滋賀県は11日から博物館や美術館、床面積1000平方メートル以下の小規模店舗などは対象から外すが、飲食店の営業や酒類提供時間の短縮については要請を続ける。担当者は「特定警戒府県に囲まれ、他府県からの流入が見込まれるため」としている。和歌山県も県外からの来客が少ない一部博物館・美術館は要請を解除するが、「周辺府県の感染拡大が続いている」としてナイトクラブやスナック、バー、カラオケなどの遊興施設、パチンコ店やゲームセンターなどの遊技施設などについては継続する。
新規感染者が少ない地域では、7日以降の要請を続けない県が多い。香川県は大型連休中、うどん店に休業を要請したが、4月20日を最後に県内で新たな感染者が出ていないことなどから、休業要請を延長しないことを決め、7日から通常営業に戻った。
高松市番町5の人気うどん店「さか枝」では、午前7時半の開店と同時に常連客らが次々とのれんをくぐった。週に3日以上は足を運ぶ市内の会社員、桜井大輔さん(39)は「県民として、今までのように店でうどんを食べられることがうれしい」と笑顔を見せた。
坂枝繁店長(57)によると、休業前に比べて客足は少ないというが、「県外の人も讃岐うどんを楽しみにしていると思う。コロナが落ちついたら訪れてもらいたい」と早期の収束を願った。