新型コロナウイルスに感染後、いったん陰性が確認されながら再び陽性となった人が少なくとも17道府県で計37人(11日現在)いることが毎日新聞の調査で分かった。再陽性は世界各地で起きているが、ウイルスの特性について未知の部分が多く、原因は分かっていない。厚生労働省は、陰性が確認された後も4週間程度は健康観察を続けるよう求めている。
複数の専門家によると、再陽性は①体内に残るウイルスが微少なため陰性結果が出たが、その後ウイルスが再び活性化した(再発)②ウイルスにまた新たに感染した(再感染)③誤判定(偽陰性や偽陽性)――などが考えられる。
毎日新聞が全国の都道府県や政令市などに調査したところ、今月11日までに再陽性が確認できたのは17道府県の20~90代の男女37人(北海道は一部年齢非公表)。北海道9人、大阪府7人、愛知県5人、兵庫県と滋賀県各2人、長野県や福岡県など12府県は各1人だった。
37人はいずれも退院時や療養施設を退所時などにPCR検査で2回連続で陰性判定を受けていた。また、37人中34人は再陽性と判定される直前に、発熱や味覚障害、倦怠(けんたい)感など典型的な新型コロナの症状が出ていたことも確認されている。ほかの3人は無症状だった。
熊本市の20代の女子学生は4月3日に感染が判明し入院したが、検査で2回連続で陰性となり6日後に退院。しかし、同17日以降に倦怠感や味覚異常などを訴え、26日に再び陽性が判明した。同居する親族の50代女性の感染も同日、明らかになった。
退院から不調を訴えた17日まで、女子学生は自宅から出ていないといい、市は「再発」を疑う。しかし、新たに感染した可能性も拭えないという。
大西一史・熊本市長は「新型コロナは非常に長期間、感染者に潜む特性があるのではないか。もし抗体ができたのに再感染しているのであれば大問題だ」と強い危機感をにじませる。
熊本市はデータを国立感染症研究所に提供し、解析を進める。再陽性者が出た北海道や秋田県も、同研究所から依頼があり、データを送っているという。
菅義偉官房長官は7日の記者会見で再陽性について問われ「一般的に感染症にかかれば抗体を獲得し、短期的には再感染は考えにくいとされる。しかし、新型コロナでは、抗体の有無と再感染の関係性などは明らかになっていない点が多い。国で分析中だ」と説明した。
再陽性者は中国や韓国など他国でも数多く発生しており、研究が進む。立命館大大学院の美馬達哉教授(先端総合学術研究科)は「海外の研究では、死んだウイルスの断片が検出された『偽陽性』を指摘する声もある。検査上のエラーや再発、再感染の可能性があるが、長期的にデータを追って研究を進めないと解明できない」と話した。【斎川瞳、三上健太郎、林田奈々】