京都アニメーションのスタジオが放火され、社員36人が死亡するなどした事件で、京都府警は5月27日、入院での治療が続いていた青葉真司容疑者を殺人や殺人未遂、現住建造物等放火などの疑いで逮捕した。 京都新聞(5月27日)によれば、青葉容疑者は会話は支障なくできるが、今も自力での歩行や食事ができない状態で、逮捕時もストレッチャーに寝かされた状態で病院を出たという。 大勢の人が亡くなるなど事件が極めて重大であることは間違いないが、自力歩行もできない容疑者を逮捕する必要があるのだろうか。また、逮捕するにしてもなぜこのタイミングだったのか。神尾尊礼弁護士に聞いた。 ●逮捕にまつわる「4つの疑問」に答える ーー「逮捕」に必要な条件を教えてください この事件を考える前に、逮捕という手続に対する一般的な4つの疑問にお答えします。 (疑問その1)「犯人」だから逮捕するのか? 刑事事件となると、「探偵が犯人を当てた後、警察が犯人を連行する」という刑事ドラマのシーンがよく出てきます。ただ、「事件を起こした犯人であれば必ず逮捕される」というイメージは実は誤りです。 刑事裁判を経ることで有罪か無罪か決まります。したがって、逮捕するかどうかのときに、有罪である「犯人」と決めつけられてしまうような人は存在しません。「犯人」だから、ではなく、次に述べるような条件が揃っているから逮捕できるのです。 ●逮捕できる「条件」 「逮捕」は人の自由を制限できる強力な手続なので、その条件は厳格です。 (A)その人が罪を犯したと疑っていいくらいの相当な理由 (B)逮捕の必要がないとはいえないこと(逃亡や証拠を隠滅するおそれがないとはいえないこと) この2つの条件(細かく分けると3つの条件)がないと、逮捕はできません。そして、警察官などが裁判官に対して、(通常)逮捕状を請求します。裁判官が、これらの条件を満たしていると判断すれば、逮捕状が発付され、逮捕が認められるのです。 (疑問その2)逮捕されると「犯人」なのか? (1)の逆で、逮捕されると「犯人」扱いされることがあります。これも間違いです。あくまで「犯人」という疑いに留まります。 実務上、逮捕状を請求すると、ほとんどそのまま発付されます。裁判官の審査が機能していないとはいえます。 ただ、警察官の請求どおりに逮捕状が発付されても、それは「犯人」であると捜査機関にお墨付きを与えるものではなく、あくまで逮捕の条件があると裁判官が判断したに過ぎない、というのは理解しておくべきでしょう。
京都アニメーションのスタジオが放火され、社員36人が死亡するなどした事件で、京都府警は5月27日、入院での治療が続いていた青葉真司容疑者を殺人や殺人未遂、現住建造物等放火などの疑いで逮捕した。
京都新聞(5月27日)によれば、青葉容疑者は会話は支障なくできるが、今も自力での歩行や食事ができない状態で、逮捕時もストレッチャーに寝かされた状態で病院を出たという。
大勢の人が亡くなるなど事件が極めて重大であることは間違いないが、自力歩行もできない容疑者を逮捕する必要があるのだろうか。また、逮捕するにしてもなぜこのタイミングだったのか。神尾尊礼弁護士に聞いた。
ーー「逮捕」に必要な条件を教えてください
この事件を考える前に、逮捕という手続に対する一般的な4つの疑問にお答えします。
(疑問その1)「犯人」だから逮捕するのか?
刑事事件となると、「探偵が犯人を当てた後、警察が犯人を連行する」という刑事ドラマのシーンがよく出てきます。ただ、「事件を起こした犯人であれば必ず逮捕される」というイメージは実は誤りです。
刑事裁判を経ることで有罪か無罪か決まります。したがって、逮捕するかどうかのときに、有罪である「犯人」と決めつけられてしまうような人は存在しません。「犯人」だから、ではなく、次に述べるような条件が揃っているから逮捕できるのです。
「逮捕」は人の自由を制限できる強力な手続なので、その条件は厳格です。
(A)その人が罪を犯したと疑っていいくらいの相当な理由
(B)逮捕の必要がないとはいえないこと(逃亡や証拠を隠滅するおそれがないとはいえないこと)
この2つの条件(細かく分けると3つの条件)がないと、逮捕はできません。そして、警察官などが裁判官に対して、(通常)逮捕状を請求します。裁判官が、これらの条件を満たしていると判断すれば、逮捕状が発付され、逮捕が認められるのです。
(疑問その2)逮捕されると「犯人」なのか?
(1)の逆で、逮捕されると「犯人」扱いされることがあります。これも間違いです。あくまで「犯人」という疑いに留まります。
実務上、逮捕状を請求すると、ほとんどそのまま発付されます。裁判官の審査が機能していないとはいえます。
ただ、警察官の請求どおりに逮捕状が発付されても、それは「犯人」であると捜査機関にお墨付きを与えるものではなく、あくまで逮捕の条件があると裁判官が判断したに過ぎない、というのは理解しておくべきでしょう。