冬眠から目覚め、餌を求めるクマの活動が活発になり、山形県内で目撃が相次いでいる。散歩中の高齢男性が襲われてけがをする被害も出た。夏場に向かい急激に増加する傾向があり、アウトドアシーズンを前に注意が必要だ。一方で、駆除を行うハンターの高齢化は深刻で、担い手不足が顕著なだけに、県などは若手狩猟家の育成を狙う。
6、7月に目立つ出没
5月20日午後3時ごろ、長井市平山の遊歩道に突然、体長80センチほどのクマが現れた。散歩中だった80代の男性が襲われ、頭部を縫うけがをした。県みどり自然課によると、今年は1月に初めて目撃され、これまでに60件(5月31日現在)が目撃された。2019年は、450件の目撃があったが、月別では6月(93件)と7月(101件)の出没が特に目立ち、夏場に向けて警戒が必要なようだ。
クマなどの野生鳥獣による農作物への被害額は14年以降、5年連続で5億円を超えている。深刻な被害の防止に向けて活動するのが県内に16支部ある猟友会だが、高齢化に伴う担い手不足に悩まされている。
20代わずか4人、高齢化深刻
同課によると、狩猟免許(第1種、第2種、わな、網)取得者数は1978年の8330人をピークに、19年は2249人と4分の1まで減少。支部の一つ、山形支部の会員数は現在180人だが、60~70代が7割程度を占め、20代はわずか4人。最多会員数だった619人(82年)から7割程度減少した。同支部の佐藤勝彦支部長は、「新規で入る人よりも、やめていく人の方が多い」と漏らす。
実際に猟を行うには、狩猟免許を取得した上で、出猟を希望する都道府県で年度ごとに狩猟者登録が必要。また第1種(散弾銃、ライフル)や第2種(空気銃)の狩猟免許を取得するには、銃刀法に基づく講習会などを受講し、所持許可を受けなければならない。
県猟友会によると、免許取得の費用や銃などの装備をそろえるための初期費用は、約30万~40万円と高額。佐藤支部長は「煩雑な手続きに加えて費用もかかるが、野生鳥獣の被害を抑えるためにも猟師の育成は必要だ」と悩みは尽きない。
このような現状に対処するため、県などは、新規に県猟友会に入会した人に対し、実技講習実施や銃の購入費の3分の1(上限5万円)を補助するなどの支援策として、今年度の一般会計予算に約400万円を盛り込んだ。同課の担当者は「高齢化が進んでいるのは事実。県として、担い手を確保するための支援をしていきたい」としている。【藤村元大】
遭遇した際の注意点
・クマから見れば、森林は自分の領域で人間は侵入者。周辺に十分注意する
・山林や田畑に行くときは、ラジオやクマ鈴など音が出る物で人間の存在をクマに知らせる
・子グマのそばには母グマがいて危険なので、できるだけ早く遠ざかる
・クマに遭遇したら背を向けずゆっくり後退
・餌付けとなる食品や果実などを放置しない
※県の注意喚起ビラに基づき作成