瀬戸内海の離島にある国立ハンセン病療養所「大島青松園」(高松市)が、島外からの訪問受け入れを中断している。入所者の多くが80歳を過ぎ、新型コロナウイルスに感染すれば重症化する恐れがあるためだ。少なくとも8月末まではこの措置が続き、毎年恒例の夏祭りの中止も決まった。こうした中、過去に不当な隔離や差別を強いられてきた入所者からは、ハンセン病の歴史とコロナ禍を重ね合わせる声も上がる。
「島が死んだようにひっそりとしてしまった」
11歳から園で暮らす松本常二(つねじ)さん(88)が電話取材にそう声を落とした。園は新型コロナの感染が広がり始めた2月下旬、職員を除いて島外からの訪問受け入れをストップ。中断期間は既に3カ月以上に及ぶ。毎年8月にあり、島外住民も多数参加してきた夏祭りの中止も既に決まり、松本さんは「活気がなく寂しい日々を送っている」と大きな変化への戸惑いを口にした。
大島は高松港の沖合約8キロに浮かび、同園の入所者らは文字通り社会と隔絶された暮らしを余儀なくされてきた。一方、らい予防法が廃止された1996年以降は徐々に島外との交流が進み、2019年4月には定期旅客船も就航。この年は3年に1度の瀬戸内国際芸術祭が開かれたこともあり、大島にも多くの人たちが訪れた。
そうした中で降りかかったのが、コロナ禍だった。松本さんは島外との往来ができなくなった現在の状況に理解を示しつつ、かつての強制隔離の記憶も思い起こすという。「早く薬(ワクチン)ができてほしい。その日が来ることを願っている」と早期収束を願う。
新型コロナを巡っては感染者への中傷や差別、さらには医療従事者への嫌がらせも目立つ。入所者自治会長の森和男さん(79)はハンセン病患者らに対しても同様のことがあったと振り返り、「日本の社会構造は昔も今も大きく変わっていないのかもしれない。今回のコロナによるこうした問題はとても残念だ」と指摘する。
森さんはさまざまな差別根絶を目指し、体験を語る講演にも積極的に取り組んできた。今改めて啓発の難しさを感じつつ、それでも声を上げ続ける決意を新たにしている。「機会あるごとに、差別はいけないことだと伝えていくしかない。そして一人一人が自覚してほしい」【金志尚】
大島青松園
ハンセン病患者を隔離するため1909年に開設された。入所者は43年の740人から現在は48人にまで減り、平均年齢は84・5歳(2020年6月1日現在)。国の隔離政策は01年の熊本地裁判決で違憲とされた。