【コロナ禍が生む「嫌日外国人」】#2
コロナ禍の影響を受けた留学生に関する報道が増えている。<新型コロナで帰国できず 困窮留学生に支援広がる>(NHK・6月2日)、<失ったバイト、途絶えた仕送り 困窮留学生に広がる支援>(朝日新聞・同1日付)といった具合に、「困窮留学生」への支援を美談で報じるケースも目立つ。
だが、これらの報道は実態を正確に映し出していない。
NHKが取り上げたのは、母国へ帰国できない留学生を助けるコロンビア大使館の取り組みだ。ただし、コロンビア人留学生は昨年6月時点で日本に140人しかいない。万単位で存在するベトナムなどアジア新興国出身の留学生の「困窮」はよりひどいが、そちらにはスポットを当てないのである。
「朝日」の記事でも登場するのはタイやアフガニスタン出身の“少数派”の留学生たちだ。しかも留学先はエリート大学。そんな彼らが先輩の卒業生らから食料などを支援してもらったのだという。支援は結構なことだが、いずれも問題の本質には触れていない。「困窮留学生」は、何もコロナだけが原因で生まれたわけではないのである。
2012年末に安倍政権が誕生して以降、アジア新興国の“偽装留学生”たちが急増した。彼らは留学費用を借金に頼り、出稼ぎ目的で来日する。
留学ビザは日本でアルバイトなしで生活できる外国人に限って出されるのが原則だ。偽装留学生は本来、留学ビザの発給対象にはならない。しかし、厳格に適用すれば「留学生30万人計画」は達成できなかった。そのため政府は原則をねじ曲げ、「週28時間以内」の上限を設けて、働く留学生も受け入れ続けてきた。彼らを低賃金の底辺労働に利用するためだ。
■自らも手足に使って…
偽装留学生の数を特定することは難しいが、近年増加した新興国出身の留学生の多くがそうだとみて間違いない。コロナで最も苦しんでいるのも彼らだが、大手メディアは報じない。
「30万人計画」は安倍政権肝いりの国策だ。それに異を唱える報道は避けたい上に、大手紙には「不都合な事情」も抱えている。大手紙の配達現場では日本人の配達員不足が進み、留学生の労働力頼みが著しい。つまり、新聞社も「30万人計画」の恩恵にあずかっているわけだ。
しかも現場では、「28時間」を超える違法就労に加え、残業代の未払いも横行している。そんな中、偽装留学生問題を報じれば、自らの新聞配達の問題に火の粉が及びかねない。だから紙面で留学生問題を深掘りできない。結果、「美談」を伝えるか、上から目線で「困窮留学生」を哀れむ程度の報道しかできないのである。(つづく)
(出井康博/ジャーナリスト)