未着工のリニア中央新幹線静岡工区を巡り、南アルプストンネルの工事による大井川への悪影響を懸念する流域10市町の首長や副市長と川勝平太・静岡県知事が16日に開いたウェブ会議で、10市町のJR東海への不信感が改めて浮き彫りになった。国土交通省の有識者会議の議論が続いているにもかかわらず、品川―名古屋間の2027年の開業ありきで準備工事の再開を急ぐJR東海の姿勢に反発。明確に「ノー」を突きつけた。【山田英之】
JR東海は、静岡市北部3地区でのヤード(作業場)の整備について今月中の着手に川勝知事の理解を求めている。整地して資材置き場や濁水処理設備などを配置する。トンネル掘削は含まないと強調する。
JR東海の方針について、ウェブ会議で10市町からは批判が相次いだ。吉田町の田村典彦町長はなし崩しで工事が進むことを懸念。「有識者会議でトンネルの湧水(ゆうすい)や地下水の問題に関する結論が出るまで着手すべきでない」とクギを刺した。
藤枝市の栗田隆生副市長は「準備工事の再開というが、内容は工事の拡大。命の水に影響を受けることを住民は不安視している。水の環境が変わることのないようにしてほしい」と求めた。
牧之原市の杉本基久雄市長は「27年の開業ありきで、3週間程度で終わる準備工事を強行しようとしている。しかも、追加工事でありながら、あたかもすでに了解を得た工事の再開であるかのようなJRの図面の出し方に不信感を抱く」と疑問視した。
袋井市の原田英之市長は「ヤードの整備を承認すべきでない。有識者会議のみなさんに失礼だ。『27年の開業に間に合わないから絶対に準備工事をやる』なんて、つまらない理屈をJRは言うべきでない」と批判した。
御前崎市の柳沢重夫市長は「27年の開業ありきでなく、住民の思いを考えてほしい。有識者会議の結論を市民に伝えてからでないと前へ進めない」と語り、準備工事の着手は時期尚早と主張。島田市の染谷絹代市長は「流域に繁栄をもたらした大井川の恵みを我々は後世に伝えなければならない」と訴えた。