新型コロナウイルスが終息しない状況が続く中、再開した兵庫県西宮市内の中学校がコロナとの向き合い方を考える授業に取り組んでいる。約3カ月間に及んだ休校は明けたが、教師たちは、子どもたちが今も抱く感染への不安や、不安が引き起こす差別に立ち向かえる心を育てたいと知恵を絞っている。生徒の心のサポートに取り組む学校現場を取材した。【井上元宏】
「あの人が嫌だから『距離を取る』のと、その人が大切だから『距離を取る』。(言葉は)同じでも意味合いは全く違うよ」。西宮市立甲武中(同市樋ノ口町、飯干英典校長)では午前と午後に登校を分けて再開した1日、授業の始まりに、生徒指導主任の上木雷太教諭(35)が校内放送でこう呼びかけた。
各教室では、担任が日本赤十字社がまとめた「新型コロナウイルスの3つの顔を知ろう」に沿い、新型コロナには病気である感染症自体と、「不安や恐れ」「嫌悪、偏見、差別」の“感染症”があると解説した。下校時の密集を避けるため同じクラス内でも下校時刻を一定間隔でずらすなど、感染防止のルールも説明し、「困ったことがあれば先生に相談して」と呼びかけ、生徒の不安を和らげようと心を砕いた。
上木教諭が力を入れるのは、不安が原因の差別を防ぐことだ。休校中に、スクールカウンセラーの春原千夏さんから「3つの顔を知ろう」を紹介され、不安への対処の重要性を知った。春原さんは「不安は新型コロナのことを知ることで和らぐ。差別が起きる仕組みを知れば、冷静になれる」と強調する。
登校初日はこの授業のほか、学活を兼ね、担任が生徒と個別に話す教育相談に1時限を充てた。生徒数900人と市内一のマンモス校。再開後は毎日、各学級で授業終了後に15分前後相談の時間を設け、約1週間で全生徒を一巡した。飯干校長は「学習の基盤になるのは心の元気。まず子どもの様子をしっかり把握したい」と話す。
西宮市立学文中(同市学文殿町、吉田悦子校長)でも11、12日に全クラスで「3つの顔を知ろう」を使った授業に取り組んだ。2年の担任、吉原照人教諭(28)は「見えないウイルスへの不安から見えるものを敵にして嫌悪する。最前線で頑張っているお医者さんや看護師さんを遠ざけてしまうんです」と差別の愚かさを強調した。
授業の終盤、スクリーンに「みんな大変であなたはましなんだから『しんどい』なんて言ったらアカン」の文字が映し出された。吉原教諭は「こう思う時はどうしたらいいだろう」と生徒に問いかけ、「一人で抱え込まず身近な人に話して」という思いを伝えた。
授業では、背を後ろにそらすなど気持ちを楽にできる体操も実演した。道幸寛登さん(13)は「どの感染症も、みんなで協力することが大切だと分かった。少しリラックスできました」と話した。