泥まみれ、汗まみれで続く片付け 九州豪雨、ボランティアはいま 助け合い精神阻むコロナ

泥まみれになった九州豪雨の被災地では、暑さと湿気のなか、濁流が流れ込んだ家屋の片付けが続いている。本来なら全国からボランティアが駆け付けるはずだが、新型コロナウイルスの感染防止のため熊本県の市町村では、ボランティア募集が「県内限定」だ。甚大な被害が出た同県人吉市で汗を流すボランティアの姿から見えてきたのは、4年前の熊本地震を経験した熊本県民の助け合い精神と、新たな課題だった。
人吉市駒井田町の堀川文明さん(71)方では13日、10人のボランティアが泥だらけの家財道具を外に運び出し、床下にたまった泥水をバケツでくみ出した。この日の同市の最高気温は29・4度、平均湿度85%。長袖にマスク、長靴を着用したボランティアたちは汗まみれだ。堀川さんは頭を下げながら「本当にありがたい」と語った。
豪雨に見舞われた4日午前6時過ぎ、築25年の木造2階建ての堀川さん宅にはどんどん水が入り、1階の天井近くまでつかった。家族3人は2階に避難して助かったものの、水が引いた後、家の中には大量の泥が残った。
人吉市災害ボランティアセンターを通じて堀川さん宅に派遣された中野恵子さん(62)は熊本市北区の主婦。駆け付けた理由を聞くと、熊本地震の経験を挙げた。
最大震度7を2度観測した2016年4月の熊本地震で、中野さん宅は無事だったが、周辺の家屋は屋根や外壁が崩れた。その時、手伝いに来てくれたのが人吉の人たちだった。「皆さん働き者で、一緒に片付けてくれ本当に助けられた。今回の豪雨でそれを思い出した。今度は私たちが助けに行く番だと」。中野さんはタオルで汗をぬぐいながら語った。
16日に別の被災民家の片付けをしていたボランティアの川中康裕さん(56)も熊本市から来ていた。川中さんは熊本地震の時にも被害がひどかった地域でがれきの処理をしたことがあり、「被災地の光景は何度見ても心が痛む」と話す。
現場では、コロナ対策や暑さ対策など課題が多い。マスクをして作業をした川中さんは「熱がこもって、呼吸が苦しい。これからさらに暑くなる中で、ボランティアの人たちは体調管理に気をつけてほしい」と語った。
今回の豪雨では、人吉市だけで約5000世帯が浸水したとみられ、他の県内市町村でも多くの被害が出ている。県内限定のボランティアだけで足りないマンパワーをどう確保するのか。熊本市から参加した美容師の男性(40)は「被災直後は県内から人が集まりやすいかもしれないが、時間がたって難しくなれば、県外からの募集も考える必要があるのではないか。コロナのリスク回避と作業効率のどちらを優先するのか、判断が難しい」と話した。【加藤佑輔】