【もはや開催絶望 東京五輪の施設は今】#6
東京五輪の大会経費は最終的に3兆円に上るとされるが、そもそも誘致活動の時には「コンパクト五輪」が標榜されていた。経費や移動時間をかけない「コンパクト計画」が色濃く表れているのが、ゆりかもめ「有明テニスの森」駅周辺だ。
駅改札を出て左側に体操競技場、右側にはBMXレーシング会場となる有明コロシアムが見える。封鎖用の鉄板フェンスに遮られているが、駅の高架上からは、誰でも現在の様子を眺めることができる。
体操競技場は仮設建築とはいえ、木材を多用し鉄骨の構造が美しく曲面を描く、この大会で最も建築デザインとしてよくできているものといえる。しかし、会場前の広大な駐車スペースや、会場内に設置されたプレハブ建物には、五輪開催を予感させる装飾もメッセージもなく、もの悲しさが漂っている。だだっ広い空き地のようだった。
そうしたもの悲しさをさらに強めるのが、BMXレーシング会場だ。まず、目に飛び込んできたのが、起伏に富んだコースに繁茂した雑草だ。
まさに「夏草や兵どもが夢の跡」といった趣だが、ここではまだ「つわもの」どもの戦いも、夢も実行されていない。そこが雑草に覆われようとしているさまは、もの悲しさを通り越して、やはり開催できないのではないかという不吉さを感じさせた。
■華々しさ「ゼロ」
不動産業界では、空き家になったり売り地になった物件を目にすることがあるが、本当に売ろうとするなら、雑草の刈り取りや庭木の剪定は欠かせない。それは、生え放題の雑草が見苦しいだけでなく、風水的にも運を逃してしまうからだと聞く。まさにそれだ、と膝を打った。
雑草だけでなく、仮設足場で造られた観客席も華々しさに欠ける。色がグレーで工業製品というか、いわばコンサート会場のセット裏、舞台裏の様子が「表側」に出てきてしまっている。
観客席には物理的問題もある。本来、現場用の仮設資材は1年を超える長期使用を前提としていない。お台場海浜公園のトライアスロン会場の仮設観客席も潮風による傷みを考慮したのか、いったん撤去されている。波打ち際ではないが、海が近いBMXレーシングの仮設観客席も、1年間の定期点検が欠かせないのではないか。いっそ、いったん撤去して暑さ対策も含めた屋根付きの観客席にバージョンアップするなどの検討があっていいだろう。
コロナ禍は大きな影を落としているが、この延期期間を有効活用して対策を考えるのが、都や組織委員会の役割のはずだ。
(森山高至/建築エコノミスト)