新型コロナウイルスの感染拡大を受け、大阪・ミナミの中心部で酒類を提供する店に6日からの休業や営業時間の短縮(午前5時~午後8時)を求めていた期間が20日で終わった。感染を広げている「震源地」として大阪府・市に名指しされた西日本有数の繁華街は要請解除後、人出が戻りつつある。ただ売り上げにつながらない店舗も少なくないとみられ、店主らからは先行きを不安視する声が相次いだ。
「要請期間がこれ以上続かなくて良かった。ただ、解除されても客の入りは少ない。経営が傾かないか不安だ」。居酒屋「正宗屋」の店主、中川猛さん(53)は要請解除初日の21日夜、空席が目立つ店内を見ながらため息をついた。
府の求めに応じて午後10時までの営業時間を午後8時に短縮。特定地域に限定した要請で感染への不安が広がったためか、常連客さえほとんど訪れなくなった。売り上げは例年の同じ時期の半分にも満たないという。府・市は感染防止策を講じて要請に応じた店に1日2万円(最大30万円)の協力金を支払うが、「これでは人件費もまかなえない。行政にはさらなる支援を求めたい」と訴えた。
府内を中心に13店舗を展開する串カツチェーン「串かつだるま」は対象地域にある4店のうち、3店が時短営業、1店は休業した。運営会社の広報担当者は「今回の要請に果たして効果はあったのか」と疑問を呈する。「根拠がないまま感染源扱いされたと感じる。どうやって経営を持ち直せばいいのか、道筋が見えない」と嘆いた。
要請期間中に休業していたキャバクラ店は21日、ほぼ満席だった。男性店員は「きょうはなじみの客が応援に寄ってくれたおかげ。街のにぎわいは戻っていない」と顔をしかめた。
一方、要請の影響は対象地域外にも及んでいる。地域のそばにある通称「アメリカ村」で営業する焼き鳥店は、客足が戻りかけていた7月上旬と比べて3割ほど売り上げが落ちた。男性店長(38)は「ミナミ全体に与えた影響は大きい」と話した。
ソフトバンクの子会社「アグープ」のデータによると、対象地域の大阪メトロ・心斎橋駅周辺では、解除初日の21日午後9時台の人出は要請初日の6日と比べて3割以上増えた。ただ前年の同じ時期と比較すると14・1%減っている。
解除後初の週末となった22日、道頓堀のたこ焼き店の男性店主は「コロナ以前と比べて売り上げは9割も減っている」と危機感をあらわにしていた。【隈元悠太、村松洋】
感染拡大防止の効果、専門家「検証必要」
特定地域に絞った休業・営業時間短縮の要請は、感染拡大防止に効果があったのか。大阪府・市と専門家の間では見方が分かれている。
府や市によると、ミナミに設置した臨時検査場での陽性率は、要請前(7月16日~8月5日)の19・1%から、要請後(8月6~14日)は11・7%に低下。感染者の行動歴を調べた結果、発症直前にミナミの対象地域で過ごしていたとする「夜の街」関連の人は、要請前に比べてほぼ半減した。吉村洋文知事は21日、記者団に「ミナミの感染拡大を防げ、若い世代の感染が抑えられた」と評価した。
一方、早急な判断には慎重な見方がある。感染症に詳しい高鳥毛(たかとりげ)敏雄・関西大教授(公衆衛生学)は「休業などで検査を受ける人数自体が減れば、確認される感染者は少なくなる。要請でミナミの感染者数が減ったかどうかは分からない」と指摘。その上で「ミナミを制限したことで地域外に感染者を拡散させた可能性もある。その影響がみられる約2週間後に周辺の感染者数が減ったかどうかを検証する必要がある」と話した。【田畠広景、石川将来】