各地で最高気温が35度を超える猛暑日が続く中、奈良市の奈良公園周辺で、国の天然記念物「奈良のシカ」があの手この手で暑さをしのぐ様子が目撃されている。(桑島浩任)
奈良市内で最高気温37・9度を観測した今月21日午後、奈良公園沿いにある道路脇の側溝に、10頭近くのシカが座り込んでいた。奈良の鹿愛護会によると、側溝で涼むシカをとらえた15年以上前の写真が残っているといい、担当者は「木陰で休むのと同じで、日差しを避けているのだろう」と話す。
さらに利口なシカもいる。世界遺産・春日大社のそばにある食堂「かすが茶屋」の入り口に陣取る雄ジカ。人が来ても気にするそぶりを見せずに座り続け、クーラーの効いた店内から漏れ出る冷気にあたっている。
かすが茶屋を運営する奈交サービス(奈良市)によると、店の前にシカが来るようになったのは10年ほど前から。鼻先で自動ドアのボタンを押して店内に入ってくることもあり、従業員がやんわりと外へ追い返すのが恒例の光景になっているという。同社は「この光景を見に来てくださる人もいる。追い払うことはしません」としており、うまく共存しているようだ。
ほかにも、土産物店の前に設置されたミストシャワーを浴びたり、奈良国立博物館前の芝生で夕涼みをしたりするシカもいる。
暑さ対策はシカにとっても重要で、同会は昨年8月に熱中症とみられるシカ2頭を保護。そのうち1頭は15歳のメスで、人間でいえば60~70歳にあたる。自力で立つことができず、しゃがみ込んでもうろうとした状態だった。
血液検査を行ったところ、腎機能の数値が著しく悪く、熱中症と判断された。高齢で体力の衰えたシカは人間と同じように熱中症になるという。
今年は熱中症のシカは確認されておらず、担当者は「日中は日陰で休んで、うまく暑さをしのいでいるんだと思う」と話している。
動物の熱中症に注意、人よりリスク高いケースも
人の熱中症の危険性は知られているが、動物の熱中症について奈良県獣医師会小動物部会長の糠谷アヤさん(54)は「犬などの方が人よりも熱中症のリスクは高い」と指摘する。
人と違って犬や猫は汗腺が足の裏にしかなく、汗をかいて体温を下げることができない。シカも同様で、主に呼吸によって体温調節をしているため、気温が高いと効果が低く、熱中症になりやすいという。
パグやフレンチブルドッグなどの顔の平たい「短頭種」と呼ばれる犬種は、気道が狭いため特に注意が必要で、「飼い主が気づかないうちに熱中症になって体調を崩しているケースも多い」と糠谷さん。
日本気象協会が全国の犬の飼い主325人を対象に実施したアンケートによると、24・3%が「飼い犬が熱中症になったことがある」と回答。また、20・0%が「応急処置の方法を知らない」と答えており、動物の熱中症に関する周知は十分でないのが現状だ。
糠谷さんは「ペットが熱中症になったら水をかけるなどして体温を下げるのはもちろん、普段から冷房を人が快適な温度よりも低く設定してあげてほしい」としている。