逮捕の少年、6歳女児に馬乗りも 「女性刺した」と供述 福岡・商業施設女性死亡

福岡市中央区の大型商業施設「MARK IS(マークイズ)福岡ももち」で客の女性が刃物で殺害された事件で、施設内で包丁を持っていたとして銃刀法違反容疑で現行犯逮捕された自称15歳で住居不詳の少年が、逮捕直前、現場で逃げようとして転んだ6歳女児の背中に馬乗りになって包丁を突きつけ、助けようとした母親(39)にも包丁を向けていた疑いがあることが、捜査関係者への取材で判明した。少年は近くにいた客らに制止され、女児は無事だった。
福岡県警は30日、母子を包丁で脅したとして暴力行為等処罰法違反容疑を加えて送検した。捜査関係者によると、少年は「捕まりたくなかった」と容疑を認める供述をしており、県警は女児を人質にしようとしていたとみて調べる。
また、少年が「女性を刺した」という趣旨の供述をしていることも判明。現場に残る血痕の状況などから女性は1階女子トイレ内で刃物で少年に突然襲われたとみて捜査を進める。
県警によると、死亡したのは福岡市南区若久3、アルバイト、吉松弥里(みさと)さん(21)。28日午後7時半ごろ、1階で刃渡り18・5センチの包丁を持っていた少年を警備員が取り押さえ、駆けつけた中央署員に引き渡した。同じ頃、近くの女子トイレで吉松さんが血を流して倒れているのを警備員が発見し、間もなく死亡が確認された。
捜査関係者によると、少年が着ていたTシャツや包丁には血がついていた。司法解剖の結果、吉松さんは首など上半身を中心に致命的な刺し傷や切り傷が数カ所あり、手などには身を守ろうとする防御創もあった。死因は出血性ショックだった。少年と吉松さんは面識がなかった。
また、少年が少年院から県内の更生保護施設に移った後、無断でいなくなり、施設が事件前日の27日午後に行方不明者届を出していたことが、捜査関係者への取材で判明した。
事件当時、買い物客らでにぎわっていたマークイズの1階では、少年が逮捕される直前に包丁を持ったまま無言で歩く姿が目撃された。時折、包丁を小さな布で覆うような仕草もしていたという。マークイズは前日に続いて30日も全館で臨時休業となり、捜査員らが現場検証した。【一宮俊介、浅野孝仁】
「何の理由もなく殺され許せない」 殺害された女性の通夜
福岡市内の斎場では30日夜、吉松さんの通夜が営まれ、参列者は沈痛な表情で突然の死を悼んだ。
飲食店で一緒に働いていたという友人の男性(26)は、ひつぎの中の吉松さんと対面し「(遺体は)きれいな顔をしていた。何も声をかけられなかった」と言葉をつまらせた。「明るい子で『早く結婚したい』と冗談めかして言っていたのに」と早すぎる死を悼んだ。
友人の女性は「すごく思いやりがあって誰にでも好かれる子だった。何の理由もなく殺されて許せない。亡くなったことが今でも信じられない。また笑って会えるんじゃないかという気がする」と目に涙を浮かべながら話した。【大坪菜々美、中里顕】