【ポスト安倍を辛口採点 柿崎明二】政権“居抜き”「河野首相×菅官房長官」なら長期政権も 問題は「みこしの乗り方」

【ポスト安倍を辛口採点 三浦瑠麗】“哲学者”岸田3.0、“一匹狼”河野2.5に対し、菅、石破が3.5の理由は? から続く
安倍晋三首相の突然の辞任表明を受け、火蓋が切って落とされた「ポスト安倍」レース。候補者たちが連日メディアを賑わせ、水面下の駆け引きも続いている。コロナ禍、東京五輪、経済対策など課題が山積する中、次期宰相には誰がふさわしいのか。
「文春オンライン」では、各界の識者に連続インタビューを行い、「ポスト安倍候補」を採点してもらった(5点満点)。今回は、共同通信社論説副委員長兼編集委員の柿崎明二氏に聞いた。
◆◆◆
石破茂 ★3.5 「不安定な政権の姿が目に浮かぶ」
メディアでも積極的に発言し、世論調査でも高い支持率が出ている石破さんですが、いざ首相になった時を考えてみると政権の「骨格」が見えない。安倍首相には、麻生さんや菅さんという「盟友」や「参謀」がいましたが、石破さんの場合、政権の現場を回す立場を任せられる仲間の数が足りません。
となると、石破さんがいざ政権を作るとなれば、官房長官を筆頭とする主要閣僚、幹事長など党の重役を、かつて首相の座を争った敵対陣営のメンバーで構成しなければなりません。政権の一歩目となる「骨格作り」の段階で、いきなり難題を抱えてしまうのです。
安倍政権の枠組みが「ガラッと変わる」と聞くと良い事のようにも聞こえますが、実際の問題として考えると、「石破首相」の実力云々の前に、権力基盤にガタつきを抱える不安定な政権の姿が目に浮かぶのです。
次の政権は、安倍首相の「ピンチヒッター」というタイミングで始まらざるを得ません。にもかかわらず、いきなり「参謀不在」という難問をクリアすることは簡単ではない。政治家としてのキャリアや実力を考えて★3.5としますが、評価はここで頭打ち。内閣という「チーム」を構成できないという欠点は、すぐには改善できません。
菅義偉 ★4.0 「安定感あるが『ポスト菅』不在」
石破さんと比較すると、安倍政権の「骨格」を引き継ぎやすいのが菅さんと河野太郎さん。政権の「骨格作り」という最初のハードルを乗り越えることができるため、石破さんと違って、スタートから首相としての執務に専念できます。
短い準備期間で始めなければならない次の政権の性質を考えると、政治運営をしていく上での安定感は、菅さん、河野さんの二人は一日の長があるでしょう。
ただ、問題点はあります。菅さんは長年にわたって安倍政権を動かしてきた実力者ですが、菅さん本人が「ポスト安倍」になってしまうと、「ポスト菅」が見当たらない。石破さんとも通じる問題ですが、菅さんの参謀役となる、内閣の中枢である官房長官を任せられるような能力のある人物がいないのです。
実際に、菅さんが政権を担うとなれば、実務能力の高い菅さん本人が「ポスト安倍」と「ポスト菅」を兼ねる働きをして、カバーしていくこともある程度は可能だとは思いますが、限界はあります。本人がそれだけの実力者であることが、★4の理由です。
河野太郎 ★3.0 「『みこしの乗り方』覚えれば長期政権も」
菅さん同様、安倍政権の「骨格」を使い続けられるのが、先述の通り、河野さんです。「河野首相」となれば、参謀役として、そのまま「菅官房長官」を任命することが出来ます。いわば安倍政権の骨格を、そのまま“居抜き”で使って「河野政権」を始めることが出来る。スタートから首相の仕事に集中できます。これは大きなアドバンテージです。
これだけ課題が山積している中、政策の勘所が分かっている菅さんが引き続き官房長官をやってくれたら頼もしい。
とはいえ、「菅傀儡政権」という批判も出てきそうです。問題はそのときに、“一匹狼”のイメージが強い河野さんが「みこし」として扱われかねない状況にどこまで我慢できるか。ここで自らのリーダーシップにこだわって限界を見せるのか、それとも、「みこしの乗り方」を覚えて自らの政治的「引き出し」を増やすことが出来るのか。
河野さんの現時点での実力を考えれば★3ですが、ときにはうまく担がれながら硬軟合わせて政策を進めることが出来れば、安定した長期政権になる可能性もあります。河野さんの「成熟」次第では★4にも★5にもなり得る。伸びしろのある★3.0という評価です。
岸田文雄 ★- 「丸腰では総裁選は戦えない」
「政権の骨格作り」という観点で言えば、本来は外務大臣や政調会長も務めた岸田さんも考えるべきですが、岸田さんの場合は別の問題で、「ポスト安倍」の議論の俎上に載せられません。
「人がいい」ことは分かりますが、“政治センス”に疑問符がつきます。森友・加計学園疑惑が続く中で行われた2018年の前回総裁選でも優柔不断な態度を続けた挙げ句、さんざん悩んで出馬を断念しました。戦い下手過ぎて、「そもそも戦ったことがあるのだろうか」と周囲も不安になってしまいます。他の候補者が首相の座をめぐって武装して戦地に向かおうとしているのに、一人だけ丸腰の「民間人」が混ざっているような状況なのです。
仮に、岸田首相となって内閣を作ったとしても、フラフラしていれば、内閣自体が不安定になるのは火を見るよりも明らか。政治キャリアは長いものの、本当の意味でリーダーとしての役割を果たそうとしたことはありません。
いいかえれば、宰相を争うための「政治のスタートライン」に立っていない。この★の数を「岸田文雄商店の評価」とするならば、まだ開店もしていない。評価出来ない状態です。総裁選の戦いを見て評価したいと思います。
小泉進次郎 ★- 「格上だらけの内閣をまとめられるか」
環境大臣就任後、世間の厳しい風当たりに晒されることも多くなったとはいえ、世論調査を見ると、いまだに小泉進次郎さんは高い支持を集めています。
しかし、いかんせん経験も足りず若すぎます。仮に首相になったときを考えると、組閣をどうするのか。コロナ禍に経済対策、外交問題にオリンピックと課題は山積ですから、大臣にはある程度の経験を持った人物が必要です。
となると閣僚すべてが「自分よりも格上」になってしまう。進次郎首相が最も格下になるのです。周りにそっぽを向かれたときに力尽くでまとめあげられるような「腕力」があるのか分かりません。首相が統率できなくなれば、内閣は文字通り空中分解してしまいます。
そもそも立候補をしていません。小泉さんも、岸田さんと同じく、宰相を争うための「スタートライン」に立っていない。「小泉進次郎商店」も未開店状態。小泉さんも岸田さんも、「政権を任せてみれば★5だった」という可能性がありますが、ことは一国の宰相についての問題。そんな博打は打てません。
(柿崎 明二/Webオリジナル(特集班))