憲政史上最長を記録した第2次安倍晋三政権の原動力となったのは経済だった。前例のない金融緩和政策を打ち出して雇用は劇的に改善、中国や韓国に対しても主張する外交を実現させた。金融政策を重視する「リフレ派」の論客、上武大教授の田中秀臣氏は緊急寄稿で「ポスト安倍」の条件を挙げる。菅義偉官房長官や岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長らが浮上するが、安倍路線を継承せず、「金融引き締め」「財政緊縮」に転じる人物が後継になった場合、日本は再び停滞すると危惧する。 ◇ 7年8カ月続いた安倍政権がついに終わる。安倍政権の経済政策といえば、アベノミクスだ。アベノミクスは、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、そして成長戦略で構成される。特に安倍首相がここまで長期政権を維持できた大きなキーポイントは、「大胆な金融緩和」に尽きる。 金融緩和自体は、日本銀行の職務だ。だが、安倍政権は日本銀行の人事を一新し、明確な政策目標を求めた。それが現在も続く黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の体制とインフレ目標の導入である。「失われた20年」といわれる長期停滞が続く中で、いくつかの政権は積極的な財政政策を試みた。だがそれでも長期停滞を脱却することはできなかった。それを金融緩和中心で活路を見いだしたところが、安倍首相のユニークな点だ。 日本では金融政策を中心に政策運営をすることは異端視されている。だが、欧米の先進国では標準だ。日本のように財政政策のあり方だけが議論され、そこで緊縮財政と反緊縮財政の対立「だけ」に議論が尽きてしまうのは、海外からはガラパゴス化した政策論争に見えるだろう。この閉塞(へいそく)した日本の経済政策の世界に、安倍首相は新しい息吹を与えた。政策だけではない。日本経済は安倍政権のもとで息を吹き返した。長期停滞からの脱却である。 そのことは数字をみれば明瞭だ。生活実感のベースである名目国内総生産(GDP)は、安倍政権前(2012年度)と比較して19年度までで約60兆円増加した。「失われた20年」の間は、名目GDPの変化はほぼゼロだった。雇用面はさらに劇的に改善していく。政権発足時の完全失業率(季節調整値)は4・3%で、新型コロナ危機前には2・2%にまで低下していた。若年層、女性、高齢者の雇用環境は劇的に改善した。若い人たちの安倍政権への支持が厚いのは経済再生の恩恵を一番受けているからだ。 経済の復調は、外交力の向上にもつながっていく。安倍外交の大きな成果は、韓国に対する「謝罪外交」からの決別である。元徴用工問題や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を利用した韓国の「脅し」への毅然(きぜん)たる政府の姿勢は、経済の安定という内政面の不安がないことによっても担保されていた。
憲政史上最長を記録した第2次安倍晋三政権の原動力となったのは経済だった。前例のない金融緩和政策を打ち出して雇用は劇的に改善、中国や韓国に対しても主張する外交を実現させた。金融政策を重視する「リフレ派」の論客、上武大教授の田中秀臣氏は緊急寄稿で「ポスト安倍」の条件を挙げる。菅義偉官房長官や岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長らが浮上するが、安倍路線を継承せず、「金融引き締め」「財政緊縮」に転じる人物が後継になった場合、日本は再び停滞すると危惧する。
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7年8カ月続いた安倍政権がついに終わる。安倍政権の経済政策といえば、アベノミクスだ。アベノミクスは、大胆な金融緩和、機動的な財政政策、そして成長戦略で構成される。特に安倍首相がここまで長期政権を維持できた大きなキーポイントは、「大胆な金融緩和」に尽きる。
金融緩和自体は、日本銀行の職務だ。だが、安倍政権は日本銀行の人事を一新し、明確な政策目標を求めた。それが現在も続く黒田東彦(はるひこ)日銀総裁の体制とインフレ目標の導入である。「失われた20年」といわれる長期停滞が続く中で、いくつかの政権は積極的な財政政策を試みた。だがそれでも長期停滞を脱却することはできなかった。それを金融緩和中心で活路を見いだしたところが、安倍首相のユニークな点だ。
日本では金融政策を中心に政策運営をすることは異端視されている。だが、欧米の先進国では標準だ。日本のように財政政策のあり方だけが議論され、そこで緊縮財政と反緊縮財政の対立「だけ」に議論が尽きてしまうのは、海外からはガラパゴス化した政策論争に見えるだろう。この閉塞(へいそく)した日本の経済政策の世界に、安倍首相は新しい息吹を与えた。政策だけではない。日本経済は安倍政権のもとで息を吹き返した。長期停滞からの脱却である。
そのことは数字をみれば明瞭だ。生活実感のベースである名目国内総生産(GDP)は、安倍政権前(2012年度)と比較して19年度までで約60兆円増加した。「失われた20年」の間は、名目GDPの変化はほぼゼロだった。雇用面はさらに劇的に改善していく。政権発足時の完全失業率(季節調整値)は4・3%で、新型コロナ危機前には2・2%にまで低下していた。若年層、女性、高齢者の雇用環境は劇的に改善した。若い人たちの安倍政権への支持が厚いのは経済再生の恩恵を一番受けているからだ。
経済の復調は、外交力の向上にもつながっていく。安倍外交の大きな成果は、韓国に対する「謝罪外交」からの決別である。元徴用工問題や軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を利用した韓国の「脅し」への毅然(きぜん)たる政府の姿勢は、経済の安定という内政面の不安がないことによっても担保されていた。