九州中に厳戒態勢を強いた台風10号は7日朝、日本海に抜けた。7月の九州豪雨で大きな被害を受けた熊本県の被災地では住民らが大きな被害がなかったことにひとまず安堵(あんど)し、各地の避難所で不安な夜を過ごした人たちは疲れた表情で自宅や職場へと向かった。
7月の豪雨で球磨川が氾濫して市街地が浸水した熊本県人吉市は雲の切れ間から青空ものぞいた。豪雨で自宅が約2メートル浸水し、住めなくなった同市下薩摩瀬町の旅行業、那須敏喜さん(56)は豪雨後に避難していた借家から自宅の様子を見に戻り「また浸水したら、と不安だったが、大きな被害がなくて良かった。もうこれ以上災害は起きないでほしい」。自宅前の落ち葉をホースの水で洗い流していた同市下青井町の女性(73)は「夜中の強風に2カ月前を思い出し、少し身構えた。もう災害はこりごり」と話していた。
宮崎市では1級河川・大淀川の氾濫を警戒して多くの市民が避難所に詰めかけた。大淀川近くの高台にある市立小松台小にプライバシー確保のためワンタッチテントを持参し、家族4人で避難した女性会社員(45)は「蒸し暑かったけれど、扇風機も回っていてなんとか過ごせた。市内に大きな被害がなくてほっとした」と語り、午前5時ごろには避難所を出て仕事に向かった。
市内の最大3万戸余りが停電した鹿児島市。中心部にある草牟田(そうむた)小の避難所も6日午後8時50分ごろから停電して扇風機も止まり、21人が寝苦しい夜を過ごした。知人と2人で避難していた写真家、松木大作さん(34)は「突然電気が消えて驚いた。暑いが窓を開けるわけにもいかず困った」と振り返った。
長崎県佐世保市の「道の駅 させぼっくす99」では台風の影響を弱めるため、市職員が入り口付近に車を寄せるなどした。33人が一夜を過ごしたが、夜明けと共に帰宅する人が増加。最後に残った末永鈴枝さん(53)は「家に被害がないかが心配です」と不安そうな表情を見せた。
一方、普段なら通勤客でごった返す福岡市のJR博多駅前はJRや西鉄バスが始発から運転を見合わせたこともあり、人影はまばら。駅前広場は強風に飛ばされた木の枝やゴミが目立った。タクシー乗り場の列に並んでいた会社員の男性(40)は「タクシーの運転手さんも休みなのか、つかまらない」と困惑した様子だった。【浅野翔太郎、杣谷健太、白川徹、高橋昌紀】