派遣先と期間内に合意すれば正規雇用される「紹介予定派遣」として任天堂(本社・京都市南区)で勤務していたのに、上司にあたる産業医からのパワーハラスメントで関係が悪化したのを理由に正規雇用されなかったのは不当として、20代と30代の女性保健師2人が8日、同社などに地位確認や損害賠償を求め、京都地裁に提訴した。原告側の代理人弁護士によると、紹介予定派遣の雇用拒否を巡る訴訟は全国で初めて。
訴状によると、派遣会社に登録していた2人は、任天堂の採用担当者らによる面接を2回受けた後、2018年4月から3~6カ月(うち3カ月契約だった1人は3カ月契約延長)の派遣が決定。人事部で勤務し、産業医の指示で健康診断の実施や社員の健康指導などを担っていた。
だが同6月以降、業務連絡の行き違いをきっかけに、産業医はカルテ整理だけをするよう指示し、2人を無視するなどのパワハラをするようになった。2人は人事部に相談したが、同社は産業医への事実確認や指導をしなかったという。同社は同9月、産業医との関係悪化のみを理由に、2人の正規雇用を拒否した。
原告側は、同社が2回面接をしていることなどから「実質的な採用活動を行っており、原告との間には雇用契約が成立している」と主張。同社の雇用拒否は「解雇」に当たるとし「産業医と協力態勢を築けなかったのは、同社がパワハラを放置したのが原因。解雇には合理的な理由がなく無効だ」と訴えている。
任天堂は「主張を認めてもらうよう、立証に努めていく」とコメントした。
原告の2人は8日、記者会見で「正規雇用を拒否された後の求職活動では『なぜ6カ月で辞めたのか』と聞かれ、何度も嫌な思いをした。任天堂で頑張ろうと期待を持っていただけに、このような形になり悔しい思いでいっぱいだ」と訴えた。代理人の冨田真平弁護士は「紹介予定派遣は当初、正規雇用を促進するための制度と言われていたが、結局は労働者の不利になっている。この制度の在り方を問う裁判になるだろう」と指摘した。【添島香苗】