「どんな判決が出ても、(娘が)戻ってくるわけじゃない」。神奈川県座間市で男女9人が殺害された事件の初公判を前に、事件で犠牲になった福島市の高校3年の女子生徒=当時(17)=の父親(65)が、産経新聞の取材に応じた。「裁判で(白石隆浩被告の)真意は分からないだろうし、悲しみは変わらない」と苦しい胸の内を吐露した。
「これは3歳か4歳ぐらいかな。家の前が広い道で、三輪車に乗せてよく遊ばせていた。小さいときはおれがいつも髪を切っていたんだよ」
娘の幼少期の写真アルバムを広げ、ほほ笑む父親。事件から約3年が経過した現在も毎週のように見返しているという。自宅には娘の遺品が数多く残り、食事の際は毎回、幼かった娘が愛用していた人気キャラクター「ハローキティ」のコップや皿を使う。
「(娘のことは)瞬間瞬間思い返す。今年は(生きていれば)成人式。アニメが好きだったから、振り袖ではなくコスプレするかもしれないな」。頭の中で娘の成長した姿を思い浮かべる。
娘の死を知って3カ月ほどは眠れない夜が続いた。精神的なストレスで体は病魔にむしばまれ、現在も2日に1回は透析を受ける日々。「事件は意識しないようにしている。だから、娘が死んだと思っていない。そうしないと苦しいよね」。今も娘の死を実感できず、時計の針は3年前から進まない。「人間の心って弱いんだよ」とこぼす。
娘のことばかりを考えてきた父親にとって、白石被告が法廷で何を語るかに関心はないという。「どんな判決が出ても何も元に戻らない。犯人と同じ空気を吸いたくないよ」。裁判は傍聴しないつもりだ。(松崎翼)