若者を中心に広がりをみせる違法薬物の代表格、大麻。人気俳優が所持容疑で逮捕され、改めて注目を集めた。海外では合法な国があることなどから他の薬物に比べて有害性への認識が低いという統計も出ているが、使用すれば記憶や学習能力などに変化が生じ、乱用を続ければ心身に重大な影響が出る。国は注意を呼びかけており、専門家も安易な「容認論」に警鐘を鳴らす。(吉沢智美)
若年層に浸透
《大麻で人生崩壊するのは難しいと思うけどな。それならお酒の方が簡単だ。》
自宅で大麻を所持したとして9月8日、大麻取締法違反容疑で警視庁に逮捕された俳優の伊勢谷友介容疑者(44)。平成24年2月、ツイッターにこんな投稿をしていた。
調べに対し、「リラックスするために吸っていた」と供述した伊勢谷容疑者。自宅からは、約40回分の使用量に当たる約20グラムの乾燥大麻が押収された。警視庁はいつから大麻を使用していたかなどについて捜査しているが、冒頭の発言からは、大麻への心理的な「ハードル」の低さがうかがえる。
厚生労働省によると、昨年の薬物事犯の摘発者は1万3860人。そのうち大麻事犯は4570人(前年比808人増)と6年連続で増加し、過去最多を更新した。乾燥大麻の押収量も430・1キログラム(同92・8キログラム増)と4年連続で増えている。
大麻は若者を中心に広がりをみせている。警察庁によると、昨年の大麻取締法違反での摘発者のうち、57・4%を30歳未満が占めている。高校生は110人にのぼり、中学生も6人いた。
警察庁が昨年10~11月に大麻取締法違反(単純所持)で摘発された631人について調査したところ、大麻を初めて使用した年齢は「20歳未満」が48・7%と最多。次いで「20代」の37・9%となった。初めて使用した際の動機は「好奇心・興味本位」が過半数を占め、若年層に浸透している実態がうかがえる。
一方で、大麻の有害性に関する認識については「全くない・あまりない」が78・9%にのぼった。覚醒剤(5・9%)と比較すると、その認識の差は歴然。大麻の有害性を軽視する理由としては「大麻が合法な国がある」や「依存性はない(弱い)」という理由が多く挙げられている。
ゲートウェイドラッグ
厚生労働省はホームページで「大麻に含まれる有害成分、THC(テトラヒドロカンナビノール)は、幻覚作用や記憶への影響、学習能力の低下等をもたらす」などと明記し、危険性を訴えている。
大麻をめぐりしばしば指摘されるのが、さまざまな薬物依存への“入り口”となる「ゲートウェイ・ドラッグ」となる可能性が高いことだ。湘南医療大の鈴木勉特任教授(薬学)は「大麻の使用だけでは済まなくなり、覚醒剤などに移行する危険性がある」と訴える。
その一方で、「合法な国がある」「医療用で利用されている国がある」といった理由から、「大麻擁護論」もしばしば聞かれる。
ただ、鈴木特任教授は、「たとえば、医療用大麻が容認されているカナダでは、治療費が高額であり、病院で治療できない人たちが痛み止めや病気により減少した食欲を増幅させるためなどの理由でやむを得ず使用している」と指摘。「国民皆保険制度がある日本とは医療体制が違い、(大麻の使用の是非を)議論する上での前提が異なる」と主張する。
「類似商品」も
厚生労働省によると、大麻の生涯経験率は米国は12歳以上で44・2%(調査年2014年)、カナダは15歳以上で41・5%(同2012年)、英国は15~64歳で29・2%(同2014年)、ドイツは18~64歳で23・1%(同2012年)。
カナダでは2018年に嗜好(しこう)品としての大麻の所持・使用が条件付きで合法化されたが、すでに非合法なルートなどを通じて大麻が蔓延してしまったため、一定の規制をかけて国が管理する方が合理的だという判断があったとされる。
これに対し、日本の大麻の生涯経験率は15~64歳で1・4%(同2017年)と、圧倒的に低い。ただ、国内では最近、大麻にも含有されている成分を使ったオイルや電子タバコが、ネット通販などで多く流通している。口コミ欄には「リラックス効果抜群!」「イライラにすごくいいです」といった書き込みが見受けれられる。
こうした成分自体は現在、規制対象とはなっていないが、鈴木特任教授は「(違法な大麻の)使用につながりかねず、乱用を助長する可能性がある。規制を検討した方がいい」と話した。