線路にワイヤレスイヤホン落とし物急増、小さいけど運行などへ影響大…各社対応に苦慮

JR東は専用回収機器

鉄道の利用者が駅でワイヤレスイヤホンを線路上に落とすケースが増えており、鉄道会社が対応に苦慮している。東京都内のJR線で今年判明しているだけでも3か月で約950件にのぼる。回収するために電車を止める場合もあり、JR東日本は専用の回収機器を試験的に投入するなど対策に力を入れる。(柳沼晃太朗、杉本和真)

「サイズは数センチ。線路のバラスト(砕石)に紛れると、捜し出すのは難しい」。JR東の広報担当者は、こう訴える。
ワイヤレスイヤホンは、音楽プレーヤーなどから無線通信で音を受信する。耳栓に似た完全独立型が人気を集める一方で、電車の乗降時に人と接触した弾みで耳から外れ、線路に落とすケースが増えているという。
主に東京都内を管轄するJR東の東京支社が初めて、線路に落としたという申告件数を集計したところ、7~9月だけで約950件にのぼり、同期間の線路への落とし物全体の4分の1を占めた。ここ1~2年で増えている印象があるという。JR西日本でも、ワイヤレスイヤホンの落とし物件数は昨年6~12月の半年で3964件にのぼり、今年は9月までで6644件に達した。京王電鉄など私鉄でも同様の事態が起きている。
線路への落とし物を放置すると、落とし主が線路に取りに下りる恐れがあり、JR東は出来る限り回収する方針をとる。
ホーム上から見える場合は、約1メートル70まで伸びる「マジックハンド」で駅員が回収を試みる。それでも取れないと、電車を止め、駅員が線路へ下りる。朝夕のラッシュ時でも可能な範囲で同様の対応を行い、ホームから見えない時は、終電後に捜している。
しかし、ワイヤレスイヤホンは小さいためマジックハンドで取りづらいうえ、終電後の暗闇の中で見つけるのも容易ではないという。

こうしたことから、JR東は対策に乗り出した。利用者に目立つように「落としちゃイヤ~ホン」とダジャレを交えたポスターを作成して4月から各駅に掲示し、車内の動画広告でも放映した。すでに別のポスターも用意し、11月4日から掲示する予定だ。
独自の対策を進める駅もある。1日の乗車人数が約56万人(2019年度)でJR東で2位の池袋駅では、家電大手のパナソニックに依頼し、イヤホンの形状に近いものだけを吸い取る掃除機を開発。今春から終電後の回収活動などに試験的に使用している。JR東の広報担当者は「落とし物としては小さいものですが、電車の運行や現場作業への影響が大きくなりつつある。落とさないよう注意してほしい」と話している。

装着方法 確認を

家電の販売動向を調査している「BCN」(東京)によると、2019年の国内の耳栓型のワイヤレスイヤホンの販売台数は前年比で90・3%増と人気が続いている。
イヤホンなどの専門店「e☆イヤホン」の運営会社によると、周囲の騒音を消す「ノイズキャンセリング機能」などを備えた2万~3万円の比較的高価な製品がよく売れている。
多くの製品は装着する向きや左右を間違えれば、脱落しやすくなる。また、製品には耳の穴に入れる突起部分を覆うシリコーン製などのカバー(イヤーピース)が複数のサイズ(S、M、Lなど)ついており、自分の耳に合わないサイズを使うと落ちやすくなる。
運営会社の担当者は「音が聞こえにくい時は装着方法が間違っている可能性が高い。説明書にも正しい付け方が書いてある場合が多く、事前に確認してほしい」と話している。