「ネトウヨ VS パヨクの虚しい“宗教戦争”」倉山満×有田芳生、まさかの対談

―[言論ストロングスタイル]―

本人の意向はさておき一般的に「倉山満」は右の言論人にして憲政史家、「有田芳生」は左の言論人にして政治家、ともに筋金入り、ということになっている。今回、左右どちらにとっても一見「ウソだろ、やめてくれ」な対談が実現した。きっかけは倉山満氏の新刊『保守とネトウヨの近現代史』(扶桑社刊)。献本先の有田氏から編集部に感想のメールが届いたのだ。有田氏はまた同新刊に関してツイッターでつぶやくことすでに10回以上。「眼からウロコが落ちる」と評するそのポイントとは?

◆「なんだ、ほとんど考えが一緒じゃないか」と

倉山:ここ、扶桑社の応接室なんですが、場所も含めてアウェイみたいなところに来ていただきました。

有田:オウム事件の時はSPA!によく登場していましたし、SPA!に連載していた勝谷誠彦さんとも亡くなる直前までつきあいがあったので、敵陣に乗り込むみたいな気持ちはまったくありませんよ(笑)。

倉山:立場が違ってもファクトを共有しないとまずいのではないかということで書いたのが『保守とネトウヨの近現代史』です。そこに有田さんは反応してくださった。

有田:ほとんど違和感がない。なにより、自分がこれまで生きてきた歴史とぴったり合うんです。同時代体験として楽しく読ませていただきました。僕が若い頃の状況を倉山さんは、「保守」と言われる人たちは言論界の端っこの方でいじめられていた、と評価している。僕も同じ感覚。そういう人たちが、安倍政権になって、自分たちの世界がきたみたいな理解をされたんじゃないか。「おわりに」でこう書かれていますね。

《歴史家は安倍内閣を長いだけで何もできなかった政権と断罪するだろう。そして、そんな安倍晋三にぶら下がっただけの「保守」「ネトウヨ」など、日本の歴史から忘れ去られるだろう》。僕と感覚が一緒です。総括としてもすっきりしています。

◆人間の評価に零点も百点もあるはずがない

倉山:結局、人間の評価に零点も百点もあるはずがないということなんです。「自分は与党支持だから安倍さんの言うことは全部応援する」。「自分は野党だから安倍さんの言うことは全部否定する」。これはおかしい。それは、帰依する、ということで自分の頭で考えてはいません。

有田:本が届いた時、ちょうど、杉田水脈さんが五回目の炎上中で、杉田さんのところから読み始めたんです。杉田さんが山口敬之さんを守ったのは、伊藤詩織さんに対する憎しみからなんだ、と書かれていますね。

倉山:それ以外に想像がつきません。難しい説明かもしれませんが、これはまるで宗教戦争です。安倍零点か百点か。反安倍か反・反安倍か。一ミリも譲れなければ伊藤さんは(反・反安倍派から)悪魔とみなされるんです。それは杉田さんも同じことで、一般の人たちからも悪い人だと言われたりする。ここは強調しておきたいんですが、杉田さんは悪い人ではありません。「賢か愚か」と「善か悪か」という話とではぜんぜん違います。

◆「有田さんの方が安倍さんに同情的で、私の方が批判的という(笑)」

有田:ネットはものすごくイメージをつくっちゃう。僕なんか、北朝鮮のスパイだとか工作員だとかと、今でも言われているはずです。

倉山:有田さんも悪魔化されていると思います。逆に、私なんか、どう思われているんですかね。

有田:上念司さんとテレビで罵りあったことがあって、その上念さんと一緒にやっているというイメージの倉山さんだから、罵りあう対象なのかな、とは思っていましたね。偏見があったのか、申し訳ないけれども初めて読ませていただいたのがこの本で、そう言っていいのかどうかわからないけれども、なんだ、ほとんど考えが一緒じゃないか、と。

倉山:私の位置づけは、「保守なのに安倍批判している変わり者」でした。私は、8年間の安倍内閣で、最初の1年間は熱烈支持、真ん中は消極的支持、最後の1年間は積極的不支持と明言しています。

有田:その経過をお聞きしたい。

倉山:経済です。憲法うんぬんの前にメシが食えないと生きていけない。安倍さんはまず経済と言ってくれて、金融緩和、アベノミクスはいいけれども消費増税を宣言してから効果が止まり、なまぬるい、けれどもやめるよりはましかなというので消極的支持。2019年の参議院選挙で、安倍さんは何もできないままだらだらと続ける気なんだな、ということで積極的不支持。景気回復ぐらいやってくれないまま長く続くのであれば他の人に代わってもらわなければ困る。そういう経過ですね。

◆安倍政権で拉致問題の成果は確かにありました

有田:僕は拉致問題を20年くらい、北朝鮮にも2回行って、いろいろなことをやってきました。けれども、結局、安倍さんに期待していたんです。公平を期すために言っておくと、安倍政権で拉致問題の成果は確かにありました。2014年に横田滋さん早紀江さん夫妻が、めぐみさんの娘ウンギョンさんとモンゴルのウランバートルで会いました。横田さんがお願いをして実現したんだけれども、具体的に実行してくれたのは安倍政権です。

また、安倍さんは否定はせずとも認めていないんですが、政府認定拉致被害者の田中実さんと特定失踪者の金田龍光さんが生きている、と北朝鮮側が2014年に伝達してきている。被害者を取り戻すことはできなかったけれども、北朝鮮が伝えてこざるをえないような状況は、これも成果だったと思うんです。しかし、6年経つのに政府は事実を確認していない。安倍政権の成果だったんだから、菅さんに代わったけれども、それを前に進めてほしいなと思っているんです。

倉山:お話をしていると、有田さんの方が安倍さんに同情的で、私の方が批判的という(笑)。

有田:2年前ですか、安倍昭恵さんを責任者にして、横田早紀江さんもついて平壌にのりこもうという計画があったんです。僕が、山崎拓さんのところに行き、どう思われますかと聞いたところ、それはいいな、と。ただし、北朝鮮にとってはお金なんだから、二階俊博さんをかまして、密かにお金を出すからという計画でどうか、ということになりましたが結局、二階さんのところまではいかず、当時官房長官の菅さんが「つぶしました」と。森友学園が問題になってしまったこともあり、昭恵さんの立場も難しいな、というのであきらめたことがありましたね。

倉山:安倍さんが8年やってできないのなら、いったい誰ができるのか。総括する時期がきたなと思って書いたのが『保守とネトウヨの近現代史』です。右だから支持だろう、左だから批判的だろう。そういう単純な話ではないという本です。

【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。現在、「倉山塾」塾長、ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交について積極的に言論活動を行っている。ベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、『保守とネトウヨの近現代史』が9月25日に発売された

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