旧優生保護法(1948~96年)下で不妊手術を強制されたとして、夫婦と女性の計3人が国に計5500万円の国家賠償を求めた訴訟の判決で、大阪地裁は30日、旧法を違憲と判断した。林潤裁判長は「旧法は非人道的かつ差別的。子を産み育てるかどうかを意思決定する自由を侵害し、違憲だ」と述べた。一方で、不法行為から20年で賠償請求権が消滅する「除斥期間」が経過したとして国の賠償責任は認めず、原告側の請求を棄却した。
全国9地裁・支部で起こされた同種訴訟で3例目の判決で、いずれも原告側敗訴となった。違憲判断は2019年5月の仙台地裁判決に続く2例目。20年6月の東京地裁判決は違憲性を明言していなかった。
原告は、聴覚障害のある大阪府内の夫(80代)と妻(70代)、知的障害のある近畿地方の女性(77)。訴状によると、夫婦は1974年、妻が第1子を帝王切開で出産した際に不妊手術を受けさせられた。女性は15歳で患った日本脳炎の後遺症で知的障害になり、高校卒業後に不妊手術を強いられたとしている。
判決はまず、旧法の「不良な子孫の出生を防止する」という立法目的について、「特定の障害や疾患がある者を一律に『不良』と断定するもので、極めて非人道的かつ差別的」と指摘した。本人の同意が不要な強制不妊手術の規定についても、「子を産み育てるか否かの意思決定をする自由や、意に反して身体への侵襲を受けない(傷つけられない)自由を侵害した」と批判。合理的な根拠のない差別的な取り扱いをするものだとして、幸福追求権を定めた憲法13条や法の下の平等を定めた14条に違反すると判断した。
判決はその上で、除斥期間について検討。原告側は、障害や差別により裁判を起こすことは困難で、「甚大な人権侵害が時の経過によって免責されてはならない」として、除斥期間を適用しないよう求めていた。
判決は、提訴が困難だった背景に障害者に対する差別や偏見の影響があったことを認める一方、「裁判を起こせない状況を国が意図的・積極的に作り出したとは認められない」と指摘。一定期間で権利関係を安定させる除斥期間の趣旨を重視し、手術から20年以上が経過したことで賠償請求権が消滅したと結論付けた。
原告側の弁護団は「20年の時の経過のみによって救済を絶つのは、到底是認できない」として控訴する方向で検討している。厚生労働省は「国の主張が認められたと受け止めている。(違憲判断については)判決の内容を精査しており、コメントは差し控える」としている。【伊藤遥】
大阪地裁判決(骨子)
・旧優生保護法は特定の障害や疾患のある者を一律に「不良」と断定し、極めて非人道的かつ差別的
・旧法は子を産み育てるか否かの意思決定をし、意に反して身体への侵襲を受けない自由を侵害。差別的取り扱いをするもので、憲法13、14条に違反し違憲
・手術から20年以上後に提訴しており、賠償請求権は消滅。除斥期間の適用を制限するのは相当ではない
旧優生保護法
「優生上の見地から不良な子孫の出生を防止する」ことを目的に1948年、議員立法で成立。ナチス・ドイツの断種法をモデルにした国民優生法が前身で、優秀な能力を持つ者の遺伝子を保護すべきだという優生思想に基づく。遺伝性疾患や精神・知的障害などがある人に対する不妊手術や人工妊娠中絶を認め、本人の同意が不要な強制手術も定められた。96年、差別規定を削除して母体保護法に改定。国の統計では、少なくとも約2万5000人に不妊手術が行われた。