不誠実な答弁で、国会審議をやり過ごそうという姿勢が、重い結果を招いたと言えよう。
安倍前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が開いた「桜を見る会」の前夜祭を巡り、前日の記者会見同様、国会答弁の誤りを認めて、謝罪した。
参加者が支払った前夜祭の会費の不足分を、安倍氏側が
補填
( ほてん ) していた。公設第1秘書が、政治資金規正法違反(不記載)で罰金の略式命令を受けた。安倍氏は、嫌疑不十分で不起訴となっている。
補填の否定など事実と異なる答弁は、昨年11月から今年3月までで計118回にのぼるという。立法府の軽視も甚だしい。安倍氏が「国会に対する国民の信頼を傷つけた。責任の重さを痛感している」と述べたのは当然だ。
立憲民主党や共産党は委員会で、補填は利益供与が目的だったのではないか、とただした。安倍氏は「票を集めようとは、つゆほども考えていない」と語った。
安倍氏側は、前夜祭の費用の政治資金収支報告書への記載方法を総務省に問い合わせていた。
記載の必要性を認識しながら、書かなかった理由について、安倍氏は、当時の秘書との連絡を捜査当局に禁じられており、分からない、と述べるにとどめた。
国会での質疑を経ても、不明な点は残っている。真相が分かった段階で、安倍氏は丁寧に説明責任を果たすべきだ。真剣に信頼回復に努めなければならない。
前夜祭を巡る疑惑が初めて取り上げられたのは、昨年11月の国会である。安倍氏は当時から、違法性はないと強調していた。
疑いをかけられた段階で、会計処理の実態を詳細に調べ、
真摯
( しんし ) に対応していれば、これほどの問題にならなかったのではないか。
安倍氏の挑発的な答弁が、物議を醸すことは多かった。
学校法人「森友学園」への土地売却問題では、「私や妻が関係していれば、首相も議員も辞める」と強調した。その後、財務省で、安倍氏の妻に関する記述を削除するという公文書
改竄
( かいざん ) が起きた。
軽率な発言が無用な混乱を招き、本来費やすべき政策論議に影響を与えた面は否めない。その損失の大きさを、安倍氏は重く受け止める必要がある。
野党は、来年の通常国会でも前首相を追及する構えだ。ただ、今回の不記載は、国政全般を揺るがすような問題とは言えまい。スキャンダルの追及に明け暮れるだけの国会にしてはならない。