核禁条約発効へ 広島市長「廃絶へのうねりに」 長崎市長「世界常識転ずる年に」

核兵器を非人道的で違法と定める核兵器禁止条約が22日に発効する。だが、米露をはじめとする核保有国や日本など「核の傘」に依存する国々は背を向け、核軍拡は続いている。一方で、米国の大統領は、被爆者が訴えてきた「核なき世界」の理念を継承するバイデン氏に代わることになっており、変化への期待もある。被爆100年に向けた新たな四半世紀のスタートでもある2021年を、どんな年にすべきか。広島、長崎両市長からのメッセージを紹介する。
松井一実・広島市長
被爆75年を迎えた昨年は、被爆体験を基にした平和を希求する「ヒロシマの心」を発信する好機と捉えていましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大により、さまざまな取り組みが規模縮小や延期、中止となり、その期待は裏切られてしまいました。こうした中、核兵器禁止条約が今月22日に発効するという明るいニュースが届きました。
しかし、世界にはいまだ1万3000発を超える核兵器が存在し、その9割を保有する米国とロシアは核軍縮に向けた協議すら停滞させるなど、事態を後退させています。今年は、2月に期限を迎える新戦略兵器削減条約(新START)の延長問題や8月に延期された核拡散防止条約(NPT)再検討会議、そして、核兵器禁止条約発効後1年以内に開催される予定の締約国会議など、核軍縮を巡る国際社会にとって重要な1年になります。
この重要な局面においては、新型コロナウイルスと同様、人類の存続を脅かす核兵器に対しても世界中の国々が連帯し、一丸となって取り組まなければなりません。核兵器禁止条約発効に導いた潮流を着実に核兵器廃絶へのうねりに変えるため、被爆都市である広島の役割はますます重要になっていると考えます。
広島市としては、核兵器のない世界こそが人類の目指すべき平和な世界である、ということが世界の市民社会の総意となるよう、「ヒロシマの心」を発信し続けます。それとともに、米国をはじめとする各国の為政者が被爆者の思いを受け止め、核兵器廃絶の決意を固めることを後押しするため、為政者に被爆地訪問を要請していきます。
皆様にも、ぜひ、この条約の発効を機に改めて平和について考え、ともに行動していただくことを願っています。
田上富久・長崎市長
私は、毎年勝手に、その年を漢字一字で表しています。昨年は「転」でした。まるで舞台が暗「転」するように、あっという間に世界にウイルスが広がり、行動や価値観の「転」換が始まった年。それは「これからどんな社会をつくりたいですか?」と、一人ひとりに問いかけられ続けた1年でもありました。
その年の10月に核兵器禁止条約の批准国・地域が50に達し、条約の発効が確定しました。発効すれば、核兵器そのものに国際法違反という“悪の烙印(らくいん)”を押すことができます。
もちろんこの条約ができてもすぐに核兵器がなくなるわけではありません。条約の詳しい内容はまだ決まっていないからです。核兵器を持つ国々が参加できるような状況をつくる方法も含めて、これから議論が始まります。
それを話し合う第1回締約国会議に、日本政府がオブザーバーとして参加することを願っています。唯一の戦争被爆国として、核保有国と非核保有国の橋渡しをする絶好のチャンスだからです。
今年はアメリカの大統領も代わります。バイデン次期大統領の長崎訪問もぜひ実現したいことの一つです。
「核抑止の世界」から「核兵器のない世界」へと、世界の常識が重心をさらに移し始める。今年もそんな「転」の年になることを期待しています。