宇都宮市中心部にある「ホテル丸治」(福田治雄社長)。2020年5月、新型コロナウイルスに感染した軽症や無症状の人が療養する栃木県内初の受け入れ先になった。療養者は今どのように暮らし、従業員はどう対応しているのか。【渡辺佳奈子】
1泊の人もいれば2週間の人も
ホテルの総部屋数は123。そのうち111部屋を宿泊療養に充て、一般客は受け入れていない。昨年11月までに延べ9人、県内での感染者が急増した12月に延べ120人、今年は1月27日現在で延べ約260人が療養に使った。現在50人の療養者が宿泊。当初は無症状者が中心だったが、今は軽症者を軸に受け入れている。
ホテル療養には保健所と医師の判断が必要だ。入院期間を含めて10日間を目安とし、陰性が確認されるまで滞在する。1泊で出られる人もいれば2週間ほどの人もいる。症状が悪化して病院に運ばれた人もいたという。
療養者が少なかった頃はホテル退出後に2週間待って全フロアを消毒し、スタッフが部屋を清掃するという手順だった。現在は、その倍の療養者を受け入れなければならない状況で、退室翌日に消毒と清掃を行っている。
「もっと受け入れろ」苦情も
収容数がピークを迎えたのは1月中旬。80部屋ほどが埋まった時には「圧迫感」があった。「空室があるなら、もっと受け入れろ!」。そんな苦情も来た。「普段の営業とは違い、宿泊療養は特別なこと」と福田治久専務(47)は言う。
3階宴会場を倉庫に、客室を看護師や県職員らの宿泊部屋に、4~6階の客室を宿泊療養者専用フロアにした。療養者は自室の清掃やベットメイクを自分で行う。日中は、自分がいるフロアだけなら午後8時までは部屋を出られる。フロアには燃やせるプラスチック製ゴミ箱が用意されている。防護服を着た県職員がゴミ箱ごとビニール袋に包んで処分する。ホテルを抜け出そうとする人を警備員が止めたこともある。
楽しみは食事
療養者はホテルから出られない。テレビやインターネットを見たり、読書をしたり。唯一の楽しみは食事だ。ある日の献立(弁当)は、朝食がアジのみそ付け焼き▽たまご焼き▽ソーセージ▽煮物▽フルーツ。昼食はポークソテー▽塩こうじきんぴら▽ごはん▽香の物。夕食がフライ盛り合わせ▽梅ごぼうあえ、お吸い物▽ごはん▽オペラケーキといった具合。それぞれ午前7時、午前11時半、午後6時に、部屋の前に置かれた椅子の上に個別に配られる。療養者にはアレルギーを持つ人もいる。取材した27日は、50個用意された弁当のうち6個がアレルギーや個々の好みに対応していた。
福田専務は言う。「心身ともに、つらくて厳しい状況である療養者が、少しでも心穏やかに過ごせるかを考えていきたい」
県南の施設と計200部屋 県央と県北にも新設準備
県によると、無症状や軽症者を受け入れる県内の宿泊療養施設はホテル丸治と県南地域の施設の計2カ所で、約200部屋が用意されている。福田富一知事は「原則、自宅療養は避けたい」との認識を示し、県は2月をめどに、県央と県北地域に各1カ所ずつ施設を新設する準備を進めている。
施設で療養している感染者は27日現在で77人(累計502人)。感染拡大の「第3波」の11月下旬ごろから徐々に増え始めた。
一方、入院者は入院予定を含めて162人で、入院調整中の自宅療養者は408人。高齢者施設などでは、入居者が感染した場合には施設内で療養することもあり、施設等療養者数は149人だという。【李舜】