小林化工検査不正 社長釈明 「ルール守るより作業効率優先」

消費者の命に関わる医薬品のずさんな製造・管理実態が明らかになった。過去最長となる業務停止命令を受けた小林化工は9日、福井県あわら市の本社で記者会見を開いた。小林広幸社長は「患者さんに甚大な健康被害を発生させたことを深くおわびする」と謝罪。承認外の手順で製造したことや、一部の品質検査をしなかったことについては「ルールを守ることより、作業効率を優先した」などと釈明を繰り返した。
今回、経営陣が多数の法令違反を認識しながら改善策を講じなかったことも新たに発覚。小林社長は「経営者としての私の責任は極めて大きく、しかるべき時期に職を辞する」と述べた。
国が承認しない手順で製造し続けたことについては、別の役員が「変更の承認を得るのに時間がかかるため、その間の出荷を止めなければならなくなる」と利益を優先したことを明らかにした。小林社長自身は製造現場の責任者だった2005年ごろ、国が認めた手順と実際の製造工程が一致していない製品が複数あることを知ったというが、「安定供給を優先した。出荷を停止すべきだった」と釈明。一部の品質検査をせずに結果を捏造(ねつぞう)したことについても、「時間がかかる」ことを理由に挙げた。
「説明うそか」患者は怒りあらわ
一方、服用した患者からは憤りの声が上がった。睡眠導入剤が混入した問題の薬を服用し、意識を失った岐阜県高山市の会社役員の女性(30)は「安全だと思って薬を飲んでこんなことになるなんてあり得ない。処分は妥当だ」と話した。原薬を取り違えた経緯や補償に関する説明を小林化工から受けたが、「説明に来た役員も不正の放置を知っていたのだとしたら許せない。これまでの説明はうそだったのか」と怒りをあらわにした。【大原翔、深尾昭寛】
教育の徹底や監査改善の検討を
不良薬や偽造薬に詳しい木村和子・金沢大特任教授(国際保健薬学)の話 コスト削減などのため海外では品質の粗悪な不良薬が製造されることがあるが、製薬に関する制度の整った日本で睡眠導入剤が混入するようなずさんな製造が行われていたことに驚いた。小林化工には、人命にかかわる薬を作っているという認識が欠如していたのではないか。国や都道府県は今回の事例を踏まえ、製薬会社に対する教育の徹底や、監査の改善について検討することが望まれる。