大阪府の要請見送り 1週間後に再検討へ 「解除後」見据えた動きも

新型コロナウイルスの緊急事態宣言について、大阪府は9日、国への解除要請を見送ることを決めた。医療体制の逼迫(ひっぱく)状況や専門家からの慎重意見などを受け止めた形だ。一方、感染拡大の兆候をとらえる監視体制整備の検討を始めるなど、遠くない時期に訪れるとみられる「宣言解除後」を見据えた動きも始まった。
府は解除要請の基準を①新規感染者数が直近1週間平均で300人以下②重症病床使用率が60%未満――の「いずれか」が7日間続いた場合、としている。これに対し、府の専門家会議座長を務める朝野(ともの)和典・大阪大教授は9日の対策本部会議で、両指標が「両方とも」達成された場合とするよう、改めて求めた。
府の基準の「緩さ」については、他の医療有識者からも異論が出た。大阪府医師会の茂松茂人会長は重症者数について「現時点で下降傾向に入ったのか判然としない」とし、「ひとたび高齢者施設で大規模クラスター(感染者集団)が発生すると、重症用病床使用率が容易に70%を超過する可能性がある」と危機感を示した。りんくう総合医療センターの倭(やまと)正也・感染症センター長は、「解除基準として60%では甘い可能性がある。少なくとも、50%未満に下がることを確認する慎重さも求められる」とのコメントを出した。
こうした意見に、吉村洋文知事は「現状の重症病床の使用率は減少傾向だが、まだ高い。もう少し抑えたい」と理解を示した。府は、重症病床使用率が11日には60%を切るとの想定を示しており、解除要請について1週間後に改めて検討する。
一方、府は宣言解除後の再拡大防止のため、モニタリングに力を入れる方針を決めた。朝野教授は「2週間後の感染状況は予測できる」とし、感染初期に増える傾向がある20~30代の若者世代の状況を監視し、対策を取ることが重要だと指摘。重症者の多数を占める60代以上の患者数に注意することで、病床使用率もある程度予想がつくとの認識も示した。【近藤諭、松本光樹】