福島県南相馬市在住の芥川賞作家・柳美里さん(52)が25日、東京・有楽町の日本外国特派員協会で会見し、東日本大震災から10年の節目を前にした思いを語った。
東京電力福島第1原発事故で避難区域になった南相馬市に2015年に移住。地元の災害FMで被災者約600人の声に耳を傾けてきた。「苦しみは暮らしの中にあり、安全圏に身を置く自分に心が苦しくなった。悲しみの中で暮らすことを共有しなければという思いが募って移住しました」
震災からの10年を「生きることと死ぬことについて10年間、考え続けました」と振り返る。「私が暮らしている南相馬市小高区は3割しか人が戻らず、双葉町はゼロです。地元の方々が思い描いていた復興とは異なりますし、どの地域を語るかで10年の意味は全く違います」
昨年11月、南相馬から上京した主人公を描いた「JR上野駅公園口」で全米図書賞を受賞。地元にうれしいニュースを届けたが、今月13日には震度6強の地震に見舞われた。「自宅が一部損壊して修理を依頼しても200件待ち。3・11を思い出して体調を崩している人がたくさんいます」
今後も南相馬で活動を続ける。柳さんは「貼られたレッテルをはがし、顔が見えた人の人生を辿(たど)るような小説を書きたい」と誓っていた。(北野 新太)