警察庁は4日、全国の警察が2020年に把握したドメスティックバイオレンス(DV)は8万2643件で、過去最多を更新したと発表した。04年から17年連続の増加だが、前年からの増加率は0・5%で同年以降で最も小さかった。新型コロナウイルスの感染拡大によって家族との在宅時間が増えた人がおり、同庁は「DVが潜在化することを念頭において、積極的に端緒を把握したい」としている。
被害者は女性76・4%、男性23・6%だった。男性が増加傾向にあり、3年連続で全体の2割を超えた。
DVの被害者を支援する団体は、統計に表れない被害の潜在化を危惧している。NPO法人「女性ネットSaya-Saya」(東京)には「在宅勤務になった夫に声が聞こえるから相談の電話ができない」といった女性の声が寄せられており、感染拡大が深刻化した3、4月は相談件数が大幅に減った。このため、無料通信アプリ「LINE」での対応を始めると、結果的に年間の相談件数は前年の2倍に上った。
ただ、被害を我慢し続ける人がいるとみられ、松本和子代表理事は「相談に来ても、コロナの影響で雇用が不安定になり、経済的事情で加害者から離れて暮らす行動を取れない人がいる」と話す。警察への相談に至らない場合には、精神的に相手の支配下に置かれた被害もあるとし、「深刻化する前に対処することが大事」と相談体制を充実させる必要性を指摘する。
NPO法人「全国女性シェルターネット」(東京)の北仲千里共同代表は、「被害者は自分が悪いと思いがちで、家庭という閉じた空間では異常さに気づかないことが多い。コロナ禍で家に閉じこもりがちになっても一人で抱え込まないでほしい」と呼びかける。
NPO法人「ハーティ仙台」の八幡悦子代表は「コロナによる生活の困窮が心配。そのストレスは女性ら弱者に向けられ、DVが増える」と心配を募らせる。「『相談するほどのことだろうか』とためらわないで、相談してほしい」と話している。【町田徳丈】
コロナ禍のDV被害者の声の例
※NPO法人「ハーティ仙台」に2020年春にあった相談から
・飲食関係の仕事をしている夫の収入が激減して、DVがひどくなった
・ホテルの清掃の仕事がクビになった。夫からの自立を目指していたのに悔しい
・別居をする予定だったが、支援者が高齢なので、感染させないか心配で動けなくなった
・コロナで以前よりも孤立し、不安でゆううつだ
DVに対する国の主な相談窓口
○DV相談ナビ<内閣府>
#8008 最寄りの相談機関に自動転送(受付時間は相談機関によって異なる)
○DV相談+(プラス)<内閣府>
0120・279・889(24時間)メール(24時間)、チャット(正午~午後10時)でも受け付け