広島県議会で13県議の審査会設置請求 河井夫妻事件で辞職せず

2019年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公職選挙法違反に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告(57)=公判中=や妻の案里元参院議員(47)=有罪確定=から現金を受け取ったとされる広島県議13人について、県議会の2会派は4日、県政治倫理条例に基づく審査会の設置を中本隆志議長に請求した。検察当局が立件しなかった13人は全員が議員辞職しておらず、県議会として経緯の説明を求める考え。07年の条例制定以来、初めて審査会が設けられることになった。
民主県政会(14人)と公明党議員団(6人)が連名で請求した。条例では県議が「公正を疑われるような金品の授受」をした場合、定数(64人)の6分の1以上かつ2会派以上の県議が請求すれば、審査会を設置できると定める。この日、犬童英徳県議(民主県政会)から審査請求書を手渡された中本議長は「時間をかけず、早期に開催したい」と述べた。
審査対象となる県議13人は19年参院選で、河井夫妻から案里元議員の票の取りまとめを依頼する趣旨で渡された現金を受け取ったとされる。うち4人は、案里元議員から計160万円を提供されたことが1月の東京地裁判決で認定された。13人は自民系の2会派に所属しており、委員として審査会に参加する同じ会派の県議が厳しい姿勢で責任を追及できるかが問われそうだ。
審査は20年秋に公明党議員団が民主県政会に請求の意向を伝えていたが、公判中を理由に調査を拒否される可能性があるとして見送った経緯がある。河井夫妻の公判で13人はいずれも証言を終えており、請求後、公明党議員団の栗原俊二団長は報道陣の取材に「ようやくスタートに立てた。条例の精神に従い、審査対象の県議は真摯(しんし)に対応していただきたい」と話した。【小山美砂】
広島県議会政治倫理審査会
公正を疑われるような金品の授受など県政治倫理条例に定めた規範に違反する行為が県議にあった場合、実態を調査するために議長が設置する会。議長が指名する12人以内の県議で構成し、各会派は所属議員数に応じて委員を推薦できる。原則として非公開で、審査対象となる県議は要請に応じて出席し、誠実に答える義務を負う。違反行為が認定された県議には辞職勧告や文書警告を行えるが、法的拘束力はない。
同僚議員追及できるか 自浄作用に注目
河井夫妻から13人の広島県議に渡ったとされる総額は650万円に及ぶ。現金受領を認めた県内3市町の首長らが辞職したものの、現職にとどまる県議には有権者から政治責任を問う声も上がる。県議会が設置する審査会で13人は何を話すのか、委員に指名された県議は同僚議員を追及できるのか――。県議会が自浄作用を発揮できるのか注目される。
参院選公示前の2019年3月に克行議員から30万円を受け取ったとされる山下智之県議(自民議連)は「審査会への出席要請があれば粛々と応じる」と述べた。これまでの取材でも受領した現金を返却したと証言し、21年1月にあった克行議員の公判でも経緯を明らかにしており、審査請求については「全てを話したつもりだが、物足りないのであれば話す」と語った。
岡崎哲夫県議(同)は夫妻から2回にわたり計50万円を受領したとされ、案里元議員に対する1月の東京地裁判決では、うち30万円が買収目的だったと認定された。審査会には出席の意向を示す一方、公判で証言したとして「偽証罪が問われる場で詳細に話しており、聞かれたら繰り返すだけ。意味があるのか分からない」と疑問を呈した。
戸惑う県議もいる。完全無所属をうたい、自民党広志会・つばさに所属する佐藤一直県議は「ブログで報告してますよ」と話す。克行議員から受け取ったとされる30万円について、公判で買収目的を否定。2月1日付のブログでも、現金の授受に違法性の認識がなく、克行議員側に返却したなどと書いた。「ブログでの報告が説明責任にはならないんでしょうか」といぶかる。
こうした県議の主張を有権者はどう見るのか。夫妻や受領側議員を刑事告発した市民団体「河井疑惑をただす会」の山根岩男事務局長は「立件されていないだけで職にとどまっているのは問題だ」と指摘。審査会の設置は「一歩前進」とする一方、原則で非公開とする進行方法については「説明責任を果たす場が審査会なのであれば公開すべきだ。お茶を濁す場にしないでほしい」と問題視した。【中島昭浩、小山美砂】