ルール守っても…事故相次ぐ遊戯施設トランポリン器具 医師警鐘

遊戯施設に設置されたトランポリン用の跳躍器具で大けがをする事故が多発している。消費者庁が調査したところ、跳躍器具による遊びをメインにする全国の遊戯施設での脱臼や骨折が2020年9月までの5年間で約170件も発生。直近の事故件数を掲示して利用者に注意を呼びかける施設もあるが、治療に当たる医師からは「利用者が気をつけるだけでは不十分。事業者が安全対策を徹底するよう国が指導すべきだ」との声が上がる。
「今週のケガ人1人、今月ケガ人6人(救急車2台)、先月ケガ人2人(救急車1台)」。約50台の跳躍器具を設置する大阪府内の遊戯施設を3月中旬、記者が訪れると、負傷者の発生状況を書き込んだホワイトボードが受付に置かれていた。壁には「12月13日、宙返りの着地ミスで右足首骨折」などと具体的な内容を書き込んだ紙も張られている。
運営会社の社長は「バランスを崩して着地し、けがをする人が多い」と認めつつ、「危険な跳び方をしないなど、ルールを守ることや、けがや事故の責任を店は一切負わないことについて入場の際に伝え、誓約書にサインしてもらっている」と説明した。跳躍器具は5年前から設置して監視員も配置しているが、これまでに30人ほどの重傷者が出ているという。
「国がガイドライン作成を」
消費者庁が20年9月、トランポリン遊びがメインの全国28施設にアンケートしたところ、回答のあった24施設全てで事故が発生。5年間で脱臼103件、骨折63件、切り傷・裂傷53件、捻挫・打撲45件に上った。同庁は調査結果を同年12月に発表し、いきなり高く跳ばないことや、1人ずつ器具を使うことを呼びかけたが、利用者への注意喚起であって事業者への指導ではない。
遊戯施設の指導や監督を所管する経済産業省によると、安全対策としてはショッピングモールなど商業施設内の施設のガイドラインを16年6月に作成しているが、目的は子供向けのジャンピング遊具などでの事故防止で、大人も使う跳躍器具は想定していないという。前出の大阪府内の施設の運営会社社長は「同様の施設はここ数年で増えており、業界団体もないため統一的な安全対策マニュアルはない」と話す。
この施設で負傷した利用者がよく運ばれる総合病院の医師は「30例近く診察したが、けがは子供より20代前後の若者の方が多い。足首や肘、腰などを骨折し、後遺症が残りそうな人も少なくない」と指摘。「1人ずつ跳ぶなどのルールを守っていても重傷を負っており、営業自粛を求めてもおかしくない状況だ。死亡事故などが起きる前に国がガイドラインを作成するなどの安全対策に乗り出すべきだ」と訴える。
日本体操協会の石田正人広報委員は「安全に着地できれば大きな事故は減らせる。初心者には施設側が数分間、安全な跳び方や膝を上手に使った着地を指導するなど、対策の仕方があるのではないか」と話している。【桐野耕一、松本光樹】