麻酔を使って出産の痛みを和らげる「無痛分娩(ぶんべん)」で、妻(44)と長女(6歳で死亡)に重度の脳障害が残ったのは医師のミスが原因だとして、大学教授の夫(58)=京都市=らが京都府京田辺市の医院「ふるき産婦人科」(休院)に計約6億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、京都地裁(増森珠美裁判長)は26日、計約3億円の支払いを命じた。
妻はロシア国籍のエブセエバ・エレナさん。元大学准教授で2008年に日本で結婚した。
判決によると、エレナさんは12年11月、この医院で脊髄(せきずい)近くに麻酔薬を注入する「硬膜外麻酔」を受けた直後に容体が急変。心肺停止状態になり、母子ともに重い脳障害が残って寝たきりとなった。夫らは16年12月に提訴したが、長女のみゆきさんは裁判中の18年12月に亡くなった。
夫らは裁判で、麻酔担当医だった理事長の男性医師が誤って麻酔針で硬膜を破り、麻酔薬を一度に大量注入。異常を示す症状が出た後も適切な回復措置を取らなかったと主張していた。当初、医師は自らの過失を否定していたが、最終的にミスを認め、損害賠償額などを争っていた。
無痛分娩は近年急速に広まり、日本産婦人科医会の調査では全分娩の6・1%(16年度)を占めるが、重大事故も相次ぐ。この医院は無痛分娩や帝王切開時の麻酔ミスでいずれも母子が寝たきりになったとして、別の2家族も損害賠償請求訴訟を起こし、賠償する形で和解している。
エレナさんは今も寝たきりで24時間介護が必要だという。判決を受けて記者会見した夫は、謝罪がない医師に対して「自分がしたことに向き合って、何をすべきかよく考えて行動してほしい」と訴えた。代理人の弁護士は「医師は準備と技術が全く足りなかった。無痛分娩は十分な体制を整えてからやるべきだった」と述べた。【千葉紀和】