東京の感染者「1日500人」で緊急事態解除すると…「再拡大」

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い25日に3回目の緊急事態宣言が発令された東京都について、1日当たりの新規感染者数が500人を下回った段階で宣言を解除すると、2カ月で1500人超に新規感染が拡大するとの試算を、東京大の仲田泰祐(たいすけ)准教授(経済学)と藤井大輔特任講師(同)が公表した。経済損失も大幅に増加する可能性があるという。感染力が強いとされる変異株への置き換わりが急激に進んでいる影響で、これまで以上に感染の抑え込みが難しくなっているためとみられる。
試算は4月25日までのデータをもとに、ワクチン接種の状況も加味して、今後の感染者数の推移と経済への影響を予測した。都内で広がりつつある英国由来の変異株の感染力が、従来株の1・5倍と仮定した。
1日当たりの新規感染者が5月第2週に500人を下回った状態で宣言が解除され徐々に飲食店などが営業再開した場合は、新規感染者数は再び増加に転じ、6月第4週には1000人超、7月第1週には1500人を超えると試算。緊急事態宣言を再発令するレベルに達し、経済損失額は約3兆8000億円に膨らむと見込んだ。
5月11日までとしている現在の緊急事態宣言の期間を延長し、6月第2週に250人を下回った段階で解除した場合も、8月第3週には1800人超に達し、経済損失額も3兆5000億円超との結果になった。
一方、1日当たりの感染者数が100人を切ると予測される7月第4週まで宣言を延長した場合は、その後の新規感染者数は緩やかに増加するものの、ワクチンの接種が進む効果もあり、宣言を再発令することなく収束に向かうという。経済損失額も約2兆6000億円となった。
実際の感染者数の推移は、変異株の感染力や人々の行動によって大きく異なってくるとみられる。仲田准教授は「仮に感染者数が横ばいのまま宣言を解除すれば、より早期に感染の再拡大を招き状況はさらに厳しくなる。できる限り、感染者数を下げて解除することが望ましい」と話している。【岩崎歩】