札幌市内の新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛からず、日別感染者数の過去最多更新が続くのはなぜか――。今回の「第4波」は昨年の「第3波」では見られなかったクラスター(感染者集団)や感染経路に特徴の違いがあり、専門家は「まん延防止等重点措置の適用が遅れ、人出が減っていないことが要因」と分析する。
市内の直近1週間の10万人当たり新規感染者数は13日時点で「110・1人」となり、初めて100人を突破した。市は独自に全国の政令指定都市の感染者数を分析しており、12日時点で、同じく感染が広がっている福岡市や大阪市の数値を超えた。秋元克広市長は「全国の政令指定都市で最も厳しい状況にある」と焦りを見せる。
感染者の最多更新が続く中、市内のコロナ患者用病床は使用率9割超えが続く。市外搬送も増えており、市幹部によると、留萌市や深川市の公立病院まで搬送したケースもあるといい、過去最悪の状況となっている。
第3波ではクラスター多発したが
昨秋から冬にかけての第3波では、繁華街ススキノで感染者が増えた後、病院や福祉施設でクラスターが多発し、100人を超える大規模なものも少なくなかった。
一方、変異株が流行した3月以降の第4波では、感染者数は多いものの、第3波に比べクラスターの数は少ない。市内では12日から飲食店などに対して酒類提供の自粛が要請されているが、4月7日~5月4日の約1カ月間で飲食店のクラスターはわずか1件。
感染症に詳しい北海道科学大の秋原志穂教授(感染症看護学)は「飲食店を含む市内全体で感染対策が進み、クラスターの発生が抑えられている」と見る。
市によると、第4波の感染経路は、飲食店や個人宅の会食など、飲食を伴う場面が目立つという。大型連休が明けて以降、感染経路を追えない患者が8割を超える日も出ており、誰がどこで感染したのか、ほとんどが分かっていない。別のある専門家は、市内の現状について「夜の街や飲食店だけを対策しても十分な効果が得られない」と話す。
秋原教授は感染拡大の要因として「まん延防止措置の適用が遅れ、大型連休の人出がそこまで減らなかった」と分析。「感染を抑えるには疫学調査を徹底し、少しでも多くの感染経路を把握するしかない」と述べた。【土谷純一】