狂言師の五世茂山千作さんが74歳で死去 SF狂言や秘曲「釣狐」で話題に

明るくおおらかな芸で親しまれた京都の能楽狂言方大蔵流、五世茂山千作(しげやま・せんさく、本名・正義=まさよし)さんが21日、膵臓(すいぞう)がんのため死去した。74歳。通夜は23日午後7時、葬儀は24日午後1時、京都市左京区正往寺町457の大蓮寺。喪主は長男十四世茂山千五郎(本名・正邦=まさくに)さん。
戦後の狂言復興に大きな功績を残した十二世千五郎(四世千作)の長男として生まれ、4歳で初舞台。1976年、芸を磨き狂言界の活性化を図る場として、若手による「花形狂言会」を弟の真吾(二世七五三(しめ))さん、いとこのあきらさんと発足させた。古典狂言だけでなく、故・小松左京さん作のSF狂言「狐と宇宙人」などの新作や、上演が途絶えていた演目の復活にも積極的に取り組み、同世代や若いファンなど新たな観客層を開拓した。
94年に当主名の千五郎を十三世として襲名。2005年、還暦を記念して秘曲「釣狐(つりぎつね)」を全国で上演し、話題を集めた。
16年に当主を正邦さんに譲り、隠居名の千作を襲名後も千五郎家の顔として活躍。古典で存在感を示す一方、新作では自由な演技を見せ、朗々とした声、軽妙かつ繊細な芸で親しまれた。今年8月8日に岡山市で開かれた「後楽園幻想能舞台」で「貰聟(もらいむこ)」の舅(しゅうと)を演じたのが最後の舞台となった。