遺骨収容、民間団体が派遣停止 シベリア抑留者取り違え、防止策不十分で

厚生労働省がシベリア抑留者の遺骨を取り違えた問題を受け、NPO法人「JYMA日本青年遺骨収集団」は21日、国による戦没者の遺骨収容事業への参加を当面停止することを明らかにした。半世紀前から遺骨収容や慰霊に取り組んできた団体で、遺骨収容に影響が出る可能性がある。
派遣停止は、厚労省が原因究明や再発防止策を尽くしていないと判断したためで、20日の理事会で決めた。JYMAの赤木衛理事長は「戦没者を一体でも多く収容しなければならないのに、このままでは現地の人に迷惑をかけてしまう。苦渋の選択だ」と話した。
JYMAはこれまで、取り違えや外国人の骨を焼いてしまうことを避けるため、収容した場所で遺骨を火葬するのをやめるよう提言してきたが、国は、DNA鑑定をする歯などをのぞき、現地で焼骨をしている。現地焼骨をやめるなど再発防止策が取られれば、参加再開を検討する。
JYMAは1967年に「学生慰霊団」として発足した。シベリアの他、フィリピンやサイパンなど戦没者遺骨が残されている地域に学生や社会人ら若い世代を派遣してきた。国の収容団に加わる代表的な民間団体で、実際の収容作業や、自主的な遺骨埋葬場所の調査をしている。
抑留者遺骨の取り違えの可能性は、厚労省調査によると、ロシア国内の埋葬地9カ所で収容した597人分に上る。DNA鑑定の専門家が14年前から「日本人ではない可能性」を再三指摘してきたが、厚労省は取り違えを公表せず、ロシアにも伝えていなかった。このうち336人分は、身元の分からない日本人戦没者を慰霊する千鳥ケ淵戦没者墓苑(東京都千代田区)に納められている。【熊谷豪】