エレベーター事故15年 防止装置の設置2割 遺族「歯がゆい」

東京都港区のマンションで2006年、都立小山台高2年の市川大輔(ひろすけ)さん(当時16歳)が、シンドラーエレベータ社製のエレベーターに挟まれて死亡した事故から3日で15年。エレベーター事故をなくすため、母正子さん(69)は「二重ブレーキ(戸開走行保護装置)」の普及を訴えるが、全国のエレベーターへの取り付け率は3割に満たない現状がある。
事故は06年6月3日、市川さんがマンション12階でロープ式のエレベーターから降りようとしたところ、扉が開いた状態で突然エレベーターの籠が上昇したことで起きた。国土交通省の事故報告書によると、原因はブレーキの摩耗とされた。
二重ブレーキは、エレベーターのブレーキが故障などで機能せず、ドアが開いたまま昇降しようとした場合に感知して停止させる装置。市川さんの事故を受けて08年に建築基準法施行令が一部改正され、新規設置のエレベーターには取り付けが義務付けられた。また、既設のエレベーターにも国交省が積極的な取り付けを求める通知を出した。
しかし昨年12月の国交省の発表では、19年度に定期検査報告が行われた全国のエレベーター71万7420台のうち、二重ブレーキ取り付け済みは26・3%に当たる18万8943台にとどまった。こうした現状に、正子さんは「エレベーターの扉が開いたまま動いてしまう事故の危険性が広まらず、とても歯がゆい」と語る。
なぜ、二重ブレーキの取り付けは進まないのか。マンション管理会社の関係者は「既設エレベーターへの取り付けには800万~1000万円かかり、建物所有者の負担が大きい。民間の建物については、自治体が助成する仕組みを広めるしかないだろう」という。
国は、既設のエレベーターに二重ブレーキを取り付ける場合に公費で助成する自治体に交付金を支給する制度を10年に設けたが、この制度を利用するのは全国で港区を含む10自治体にとどまる。他に国の交付金制度を使わずに助成している自治体もあるが、6自治体に過ぎない。
正子さんは、公的補助の促進や取り付け工事のコストの低減を求めており、「エレベーター事故の再発防止は、亡くした息子から託された使命。同じ事故を繰り返さないよう最後まで訴え続ける」と話す。
赤羽一嘉国交相は1日の定例記者会見で、二重ブレーキの取り付けについて「既存の建物(のエレベーター)にもしっかりと(取り付けを)進めなければいけないと認識しているが、はかばかしくない」との認識を示しつつ、「二重ブレーキの設置やエレベーターの適切な維持管理がしっかりと進捗(しんちょく)するように取り組む」と述べた。【加藤昌平、岩崎邦宏】