乳幼児の硬膜下血腫、虐待疑いは3割 6病院調査 国指針の見直し指摘

脳神経外科で硬膜下血腫と診断された乳幼児160例を分析したところ、約6割を低い場所からの転倒・転落が占め、虐待が疑われる例は約3割だったという調査結果が4日、福島市で開かれた日本小児神経外科学会で発表された。厚生労働省の「子ども虐待対応の手引き」は、硬膜下血腫など3症状があった場合に虐待を疑うよう求めているが、それに従えば、今回の分析事例の多くが虐待と認定された恐れがある。虐待事案では刑事裁判で無罪判決が相次ぐなど、負傷原因の判断が課題になっており、研究者は手引を見直す必要性を指摘している。
発表されたのは奈良県立医大病院▽関西医大病院▽仙台市立病院▽あいち小児保健医療総合センター▽高槻病院▽兵庫県立こども病院――の計6医療機関による共同研究の中間解析結果。2014年1月~20年8月に頭部外傷で受診し、CT(コンピューター断層撮影)やMRI(磁気共鳴画像化装置)の検査を受けた4歳以下の乳幼児462人を対象に、診療情報、負傷時の目撃者の存在、児童相談所への通告、刑事訴追の有無などを調べた。急性硬膜下血腫と診断され、保護者が虐待を自白したか、自白なしでも刑事訴追または児童相談所に一時保護されたケースを「虐待による頭部外傷(AHT)」が濃厚に疑われる事案と判定した。
急性硬膜下血腫と診断された160人はすべて月齢23カ月未満だった。そのうち▽低い場所からの転倒・転落が95人(59%)▽AHTが濃厚に疑われたのが51人(32%)▽分娩(ぶんべん)時の外傷や交通事故、高所からの転落が14人(9%)――だった。月齢別では生後3カ月~5カ月未満と9カ月~11カ月未満の二つの時期に件数のピークがあり、3カ月~5カ月未満では虐待が疑われるケースが多く、9カ月~11カ月未満はつかまり立ちからの転倒や低い場所からの転落が多かった。
厚労省の手引は、硬膜下血腫、眼底出血、脳浮腫の3症状があった場合に頭が暴力的に揺さぶられる「乳幼児揺さぶられ症候群(SBS)」による虐待を疑うよう求めているが、近年は手引に従い刑事訴追されても無罪になるケースが相次いでいる。
一方、脳神経外科の分野では「つかまり立ちなど家庭内の低い場所からの転倒や転落で、硬膜下血腫などの外傷が起こる」という報告が1965年になされている。研究代表者の一人の朴永銖(ぼくえいしゅ)・奈良県立医大病院教授は「低所からの転倒・転落で硬膜下血腫が起こる方が多いことが明らかになった。調査では虐待疑い例を広めに判定しており、さらに事故例が多い可能性もある。厚労省の手引は医学的に正しい内容に改訂すべきだ」と話している。【高野聡、肥沼直寛】