大学接種21日18校でスタート 文科省、人材確保に苦心

新型コロナウイルスワクチンの大学内接種が21日、全国18の大学で始まる。文部科学省には261大学から接種に関する相談があり、申請済は174大学(いずれも17日時点)。医療従事者の確保が難しいことなどから、初日に開始できる大学は限定的となった。文科省は大学に日本医師会の人材バンクを活用するよう呼びかけているが、企業なども活用しているため、十分な人材が行き渡るのか不透明だ。
これまで接種相談をした261大学には医学部や付属病院を持たない大学も多く、医療従事者の確保は大きな課題だ。先行する自治体接種などにも多くの医療従事者が関わり、学内接種をどの程度の規模で行うのか、各大学は難しい調整を迫られている。
現在、文科省は日本医師会の人材バンクの活用を大学側に例示しているが、当初の想定は違っていた。今月4日に設置した大学をサポートするための作業チームは、もともと「厚労省の人材バンクで医療従事者を派遣できる」との想定だった。厚労省の医療人材求人サイト「医療のお仕事Key-Net」では、コロナ対策に関わる医療従事者の求人情報を掲載しており、国際事業総合研究所の医療人材バンクと連携しているため、文科省は大学向けの人材確保につながると考えていた。
しかし「Key-Net」は自治体や医療機関での医療従事者確保を目的にしたもの。厚労省によると、職域接種に活用するには仕組みの整理が必要とされ、文科省の作業チームからは「どう使えばいいのか調整がつかない」との声も漏れた。結局、文科省は人材確保スキームの練り直しを迫られた。
文科省にとって助け舟となったのが、日本医師会が9日に立ち上げた「新型コロナワクチン接種人材確保相談窓口」。日本医師会によると、立ち上げ後すぐに大学などから問い合わせが相次いだという。文科省は15日にようやく学内接種の進め方などを説明したホームページを更新。窓口の活用を例示し、なんとか人材確保スキームの公表に至った。
ただ、大学が必要とする人材が、人材バンクを通して十分に確保できる保証はない。日本医師会は「可能な限りのマッチングをしたい」としているものの、企業などからの相談も多く、大学の要求ばかりを優先できない事情もある。開始前から想定外が続いた学内接種をめぐり、文科省は今後も難しいかじ取りを迫られそうだ。(大泉晋之助)