【衝撃事件の核心】経産キャリア 詐欺見抜かれた「派手な生活」

新型コロナウイルス対策の国の「家賃支援給付金」を詐取したとして、経済産業省の若手キャリア官僚2人が詐欺容疑で警視庁に逮捕された。2人はコロナ禍で苦しむ企業を支援するための制度を熟知した上で、悪用していた疑いが出ている。エリート街道を歩んできた2人はなぜ、不正に手を染めたのか。
高級外車2台
「給料よりも高い家賃のマンションに住み、高級外車に乗っている公務員がいる」
逮捕された経産省の桜井真容疑者(28)は、家賃が月50万円を超える部屋もある東京都千代田区一番町のタワーマンションに自宅を構え、1千万円以上の高級外車を2台も所有していた。
経産省入庁数年の給与を大幅に超えるであろう「分不相応な生活」(捜査関係者)に、警視庁捜査2課が目を付けるのも無理はなかった。
「派手な暮らしぶり」は多くの中央官庁が集まる霞が関でも知られるようになり、今回の逮捕につながっていった。
ある省庁職員によると、霞が関界隈(かいわい)では逮捕前から噂が流れていた。「桜井容疑者は何かヤバいことをやっている」
関係者によると、桜井容疑者は10代のころから株取引をして多額の利益を得ていたという。1億円近い利益を得ていたこともあるといい、豪奢な生活の資金は株取引で得ていた可能性もある。
桜井容疑者の知人は「株取引で利益を得ていたのに、なぜ家賃支援給付金に手を出したのか」と首をかしげる。
エリートがなぜ
桜井容疑者と新井雄太郎容疑者(28)は、神奈川県の名門・慶応義塾高校の同級生で、絵に描いたようなエリートコースを歩んできた。
桜井容疑者は慶応大学経済学部を卒業後、大手都銀を経て平成30年に経産省に入省。新井容疑者は慶応大学経済学部を1年で中退後、東大法学部、東大法科大学院へと進み司法試験に合格。令和2年に経産省に入った。それぞれいったんは別の環境に身を置いたが、交友関係は続いていたとみられる。
今回の不正受給の受け皿になったのは令和元年11月に設立された「新桜商事」(文京区)。新井容疑者と桜井容疑者の2人の名前から一文字ずつ取って名づけられたとみられる。
登記上は投資やコンサルティング業務などの目的で設立されたとしているが、捜査関係者は「稼働実績はなく、事実上ペーパーカンパニーと化していた」と指摘する。
捜査関係者によると、申請手続きは新井容疑者が担当。申請では、コロナ禍前のある月に数十万円のコンサル料収入があったが、コロナ禍では売り上げがゼロになったとする書類を提出していたという。
一方で、だまし取った給付金約550万円は、桜井容疑者が高級腕時計やブランド品購入、クレジットカードの支払いに充てていたとみられる。
不正受給は横行か
2人の逮捕容疑は、2年12月~3年1月、虚偽の賃貸借契約書の画像などを用いて家賃支援給付金を申請し、実体のない会社に約550万円を振り込ませて、詐取したとされる。
2人は違う部署ではあるが、経産省の外局である中小企業庁が行っていた新型コロナ対策の支援制度を熟知した上で悪用していたとみられる。
家賃支援給付金は2人の事件以外にも不正受給事案が起きている。
中小企業庁は、これまでに中小事業者と法人を合わせ8者で、計1122万円の不正受給を認定している。
しかし、この認定は氷山の一角でしかない可能性もある。給付要件を満たさず誤って申請をしたなどとして自主的に返還されただけでも936件、約6億8千万円にものぼる(1日時点)。では返還されなかった額は一体どれほどあるのか…。
中小企業庁の担当者は「審査が甘いといわれるが、性善説に基づき速やかに支払っている。そこに付け込む不正は残念で遺憾だ」と憤る。「不正に対しては捜査当局と連携し、厳正に対処していく」と強調した。
今回の事件を受けて、梶山弘志経産相は「誠に遺憾だ。国民の皆さんに深くおわびする」と陳謝。未然防止ができなかったかを検証する考えを示した上で、関係者の処分も検討する見通しだ。
ある省庁幹部は「経産省の若手には起業家志望者が多く、経産省側もアイデアマンや行動力のある若手を取りたがっているが、今回はそれが裏目に出た」と分析。その上で、「幹部候補人材の質が低下している」と突き放した。