100人不起訴 検察の判断は理解に苦しむ

これでは選挙の際に現金を受け取っても構わないという誤解を招きかねない。検察による刑事処分の公正さにも疑問を抱かせる判断である。
2019年の参院選を巡り、公職選挙法違反に問われた河井克行元法相に買収された100人について、東京地検特捜部は一律に不起訴とした。現金を押しつけられるなど、受け身の立場だったことを重視したという。
公選法には買収した側に加え、された側も罰する規定があり、これまでには5000円を受け取った運動員が略式起訴されたケースもある。今回は買収額が300万~5万円と高額で、過去の刑事処分とのバランスを欠いている。
検察は、河井被告による現金提供の経緯や状況がそれぞれ異なり、起訴と不起訴の線引きができないと説明した。多額の現金を受け取った人まで不起訴にした理由の詳細は明かさなかった。
100人のうち40人は広島の地元政治家だった。200万~10万円を受け取り、中にはグアム旅行に充てた市議もいたという。
政治家は、選挙が民主主義の根幹だと熟知しているはずだ。悪質性は明らかで、100人全員をひとくくりで不起訴にすることに、納得できない人は多いだろう。
事件に対する有権者の批判は根強い。4月の参院広島選挙区の再選挙で、河井被告が離党前に所属していた自民党は敗北した。
地元政治家40人の大半は、公職にとどまっている。不起訴になったとはいえ、不正行為は認定された。政治家として、けじめをつけることが必要ではないか。
河井被告は東京地裁で懲役3年の実刑判決を受け、控訴している。公判で弁護側は、検察が買収された側の刑事処分を行わないのは、都合の良い供述を得るためだと主張した。控訴審でも捜査のあり方が争点となる可能性がある。
選挙違反事件は、日本版「司法取引」の対象外だ。裏取引をしたとの疑念を持たれるのが不本意なら、検察は一人ひとりの不起訴理由を丁寧に説明するべきだ。
100人の不起訴を受け、市民団体は検察審査会に審査を申し立てる意向という。
最近は、元東京高検検事長の賭けマージャン問題や、菅原一秀前経済産業相の選挙違反事件など、検察審査会が検察の不起訴の判断を覆す議決が相次いでいる。
検察官は起訴の権限をほぼ独占しており、

恣意
(しい)的な運用は許されない。刑事処分の妥当性を絶えず自問する姿勢が不可欠である。