2019年にフィリピンで日本人の特殊詐欺グループの拠点が摘発された事件で、警視庁捜査2課は15日、事件当時18~19歳の少年だった2人を含む20~27歳の10人を窃盗容疑で逮捕し、日本に移送した。これで事件の逮捕者は計28人となった。依然として8人がフィリピン国内で拘束されており、同課は近く逮捕・移送する方針。
日本の警察当局からの情報提供を受け、フィリピン入管当局は19年11月に日本人36人を不法滞在の疑いで拘束。うち18人は20年2月に窃盗容疑で逮捕・移送されたが、残りの18人は新型コロナウイルスの感染拡大で帰国のめどが立っていなかった。
今回逮捕されたのは、いずれも住所・職業不詳の大下伸樹(22)▽三谷蓮(25)▽伊良部海貴(21)――ら日本人の10容疑者。移送手続きをとり、今月15日に日本行きの航空機に搭乗した後、逮捕状が執行された。詐欺の電話をする「かけ子」だったとみられる。
逮捕容疑は19年11月中旬、マニラ首都圏のマカティ市にあるビルから、東京都渋谷区に住む60代女性宅に「詐欺で捕まった犯人が持っていたリストにあなたの名前があった。キャッシュカードを保管する必要があり、財務省の職員が訪問するので指示に従ってほしい」などとうその電話をかけ、キャッシュカード5枚を盗んだとしている。
捜査関係者によると、詐欺グループはビルの2フロアを電話の「かけ場」として使っていた。役割ごとにランク分けされ、立場は下から「一線」「二線」「三線」と呼ばれた。一線と二線は警察官や財務省職員を装って被害者に詐欺の電話をかけ、三線は、キャッシュカードを被害者宅などに取りに行く「受け子」に電話で指示する役割だった。
成果を上げれば、フィリピン国内のリゾート地への旅行がプレゼントされたほか、上位の階級に上がることができる仕組みだった。摘発を免れるため、フィリピンで拠点を変えながら電話をかけていたとされる。
彼らの手口は巧妙だった。まず、警察官役の一線が日本国内の高齢者らに電話をかけ、「詐欺犯が持っていたリストにあなたの名前が載っていた。今後、被害に遭う可能性があるので、別の担当者に代わる」と伝える。
そこで電話口に出るのは財務省職員役の二線だ。「財務省の職員が受け取りに行くので、キャッシュカードと、暗証番号などを書いたメモ用紙を一緒に封筒に入れておいて」と要求。その後、三線から指示を受けた受け子が財務省職員を名乗って被害者宅を訪問していた。
発覚を遅らせるため、さらに手の込んだことをしていた。受け子は被害者に「印鑑が必要」と伝えて取りに行かせ、その間にキャッシュカードなどが入った封筒を偽カードが入ったものに交換。戻ってきた被害者には偽物の封筒を渡し、「厳重に保管しておいて」と伝えていたという。【安達恒太郎、林田奈々】