“いじめ自慢”小山田圭吾を抜擢したオリパラ組織委 東京五輪開催の“意義”は「お・も・て・な・し」に尽きる…?

東京五輪の開催意義をおさらいしておきます。
菅義偉首相は「コロナに打ち勝った証し」を最近言わなくなりましたが、その代わりにお気に入りなのが「心のバリアフリー」です。
「このコロナの厳しい中で障害のある人もない人も、また、お年寄りも若い人もともに助け合うという共生社会。その実現に向けてまさに“心のバリアフリー”を世界に発信することは極めて大事だと思っている」(7月8日の会見)
“心のバリアフリー”は会見中2度使い、強調していた(デイリースポーツ7月8日)。
東京五輪にも意義や意味はあるはず…
そんななか、かつて雑誌で障害者いじめを嬉々として語っていた小山田圭吾氏を、大会組織委員会が開会式作曲担当として嬉々として発表する流れ(*1)。よりによってオリパラで。五輪に関わるエライ人たちってやっぱり「何も見えてない」ことがわかる。もしくは「そんなことどうでもいい」のだろう。このマインドってサブカルどころかえげつない強者の五輪です。感動をありがとう。
*1 小山田圭吾は7月19日に東京五輪の開会式作曲担当からの辞任を発表。
でも、でもですよ、やるからには今回の東京五輪にも意義や意味はあるはず。
私が思う開催の意味は、滝川クリステルさんが言った「お・も・て・な・し」に尽きる。あのプレゼンは偉大だ。東京五輪の予言だったと思う。
まず、IOCのバッハ会長は日本で熱いおもてなしを受けている。
『広島訪問平和訴えも…バッハ会長に「帰れ」』(スポーツ報知7月17日)
帰れと言われてます。でもバッハはめげない。ノーベル平和賞狙いと言われているバッハは「日本国内の反応ではなく、国際政治的な目で物事を見ている」(IOC委員と親交の深い関係者・毎日新聞7月17日)。
日本人の視線なんてどうでもいいのだ。そういえば昨年秋にバッハが来日したとき北京五輪のことをやたらと気にしていた。
《IOCが気をもむのは、放映権料と共に財源の両輪を成すスポンサー収入への影響だ。東京五輪の約半年後の2022年2月には、北京冬季五輪が控える。》(毎日新聞2020年11月17日)
IOCは東京が倒れたら北京にまで影響が及ぶことを懸念しているという。北京五輪スポンサーにはアリババグループなど太いスポンサーが並ぶ。
東京五輪は自らのノーベル平和賞と北京のため。それなら日本人の視線なんて気にならないし日本人を「中国人」と言うだろう。五輪の政治利用をあらためて可視化した今大会の意義は大きい。
「お・も・て・な・し」の本当の姿
関係者は揉み手でバッハを歓待の一方、日本の「お・も・て・な・し」の本当の姿も問われる。私がいま最も気になるニュースがこちらです。
『「妻と子どものために日本で働きたい」所在不明 ウガンダ選手 書き置き残す』(日刊スポーツ7月17日)
ウガンダの重量挙げ代表・ジュリアス・セチトレコ選手が行方不明となった。「ウガンダにいる妻と子どものために日本で働きたい」との趣旨の書き置きを残していた。「生活が厳しい国には戻らない」とも。
ここで考えてしまうのだ。もしこのまま難民として日本に残れたとしても、今の日本はセチトレコ選手が思うような国なのだろうか?
日本の難民認定率は異常に低い
記事には「詳しい状況は分からないが『働きたい』というだけでは難しいと思う」という専門家のコメントが載っていた。難民と認定されるのは本来帰国すれば紛争などで命を脅かされるようなケースだ、と。
そもそも日本の難民認定率は他国に比べて異常に低い。1%もない。難民認定されない外国人は出入国在留管理庁から収容を一時的に解かれる「仮放免」という立場で暮らしている。働くことは許されず、健康保険も適用されない。県境を越えた移動は制限される。そして入管にいつ収容されるかわからない。
現在公開中のドキュメンタリー映画『東京クルド』を観ると、幼い頃から日本で育ち、日本人より日本語が流ちょうなクルド人の青年2人が「仮放免」という立場だった。それだけで進学などさまざまな夢が絶たれていた。彼らの両親は故郷での迫害を逃れ日本にやってきた。でも難民申請が認定されていない。
「仮放免」のあいだは就労は禁止されている。
「仕事してなかったら、どうやって生きていけばいいの?」
入管職員は答える。「それは、私たちはどうすることもできないよ。あなたたちで、どうにかして」
在留資格を求めると、
「帰ればいいんだよ。他の国行ってよ」と嘲笑交じりに言われる(このシーンがハッキリと映画にある)。
5年以上にわたって取材された映画だが、そこに映るのは「救いを求め懸命に生きようとする人びとに対するこの国の差別的な仕打ち」(映画パンフレット)なのである。
さらに『ルポ入管――絶望の外国人収容施設』(平野雄吾)を読むと、入管施設内での「暴行、隔離、監禁、医療放置」といった処遇など肉体的・精神的に外国人を追い込む入管施設の実情が書かれている。
今年は出入国管理及び難民認定法(入管法)の改正案が国会に提出された。法案は3回以上難民認定申請をした人については、強制送還を可能にするなどの内容だった。
そういった状況で3月には、
《名古屋出入国在留管理局(名古屋市)で半年以上収容されていたスリランカ女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡した。入院治療を求めていたが認められなかった。入管の対応を疑問視する世論のうねりは広がり、政府与党は改正案の取り下げに追い込まれた。改正案は事実上、廃案になったが、さまざまな課題は先送りされたままだ。》(毎日新聞WEB 6月20日)
「日本で働きたい」と言うけど…
『ルポ入管』には近年、「仮放免」の許可を出さない傾向が強まっているとある。以前は仮放免者の「不法就労」も黙認していた。生活のためには働く必要があるからだ。
しかしこうしたグレーゾーンが狭まる転機があった。それは何か?
「2013年の東京五輪の開催決定だった」
外国人観光客の増加が見込まれる中、入管当局は水際のテロ対策と共に、非正規滞在者の排除を掲げ始める。「我が国社会に不安を与える外国人」と位置付けたのだ。
「中でも目を付けられたのが仮放免者」だったという。滝川クリステルが「お・も・て・な・し」と言って五輪が決定した瞬間から外国人に対する本当のおもてなしが始まったのだ。
ウガンダの選手は「日本で働きたい」と言うけど日本の現実をまだ知らない。いやウガンダの選手どころではない、私たち日本人の多くも知らない。これに加え技能実習生の問題もある。
五輪の開催意義を探しまくった菅首相はよりによって「共生社会」を宣言してしまった。小山田圭吾だけではない、日本の共生社会の実情や立場の弱い人への対応を世界に見てもらおうという大会なのかもしれない。
滝川クリステルさんありがとう。「お・も・て・な・し」東京五輪はこうして開催されます。
(プチ鹿島)