岡山大病院で2017年5月に行われた脳死肺移植手術を巡るテレビ番組で精神的苦痛を受けたとして、肺を提供した男児(当時1歳)の両親がTBSや岡山大などに計1800万円の損害賠償を求めた訴訟で、広島地裁(森実将人裁判長)は28日、請求を棄却した。判決で森実裁判長は「番組は臓器移植や最先端の医療現場への理解を促進することが目的。社会通念に照らして遺族の受忍限度を超えるとは言えない」と述べた。両親の代理人によると、控訴を検討する。
番組は執刀医に密着取材し、17年7月に全国放映された。移植を受けた女児は1歳で、最年少の脳死肺移植手術として注目された。
両親は裁判で、取材について事前に説明はなく、肺がモザイクなしに映され、執刀医が「軽くていい肺」と発言するなどし「故人をしのぶ権利やプライバシーが侵害された」と主張。森実裁判長は両親に不眠などの症状が出たことは認めたが「執刀医の発言は肺の大きさや重さを観察した内容で、男児を冒とくし、肺を単なる物として扱う趣旨ではない。権利侵害があるとは言えない」などと指摘した。
男児の母は代理人を通じ「言葉もありません。今は何も頭に入ってきません」とコメント。代理人は「単に故人の尊厳を侵害したかを基準に判断された。納得できない」としている。
TBSは「今後も制作や放送にあたり細心の配慮を行う」とのコメントを出し、岡山大病院の前田嘉信病院長は「当院の主張が認められた。ドナーのご家族に心痛を与える結果となったことについては遺憾」とした。【中島昭浩】