「気持ち悪い」虫、ヤスデが大量発生 例年より早い出現の原因は

多くの足を持つ見た目の気持ち悪さで害虫扱いされている外来ヤスデ「ヤンバルトサカヤスデ」がこの夏、鹿児島市内の住宅地で例年より2カ月も早く大量発生し、住民を悩ませている。何が起きているのか。現場を訪れた。【足立旬子】
9月初め、市南部の高台にある住宅地の家の周囲には、体長2センチほどの茶色いヤンバルトサカヤスデの死骸がたくさん落ちていた。薬剤で駆除されたのだ。近くに住む60代の女性は「ヤスデがいるんじゃないかと思うと怖くて、8月は床にごろんと寝そべることもできなかった」。70代の男性は「夜になると壁をよじ登って天井まで達した」と話した。
住民は、市が無料配布する駆除剤をまいたり表面がツルツルした養生テープを張ったりして、室内への侵入を防ごうとしているが、完全には難しい。刺激を与えると毒性のシアン化合物を含むガスを出すため、焼いたり熱湯をかけたりするのは厳禁だ。
ヤンバルトサカヤスデは台湾原産で成虫の体長は3~4センチあり、日本のヤスデよりひと回り大きい。人をかんだり農作物に被害を与えたりするわけではないが、夜に集団で移動して屋内に入ってくるため、住民らは「気持ち悪い」と口をそろえる。
例年9~12月ごろに活動が活発化するが、今年は7月ごろから見られるようになり、市が配布する駆除剤の量は、既に昨年の倍。鹿児島県枕崎市でも、駆除剤の補助申請件数が昨年の3~4倍になった。
出現が早まった理由を、ヤンバルトサカヤスデの生態に詳しく県の対策検討委員を務める竹村薫さん(71)は、長雨が一因とみている。通常、ヤンバルトサカヤスデは土壌内でふ化後、5~6月に幼虫が地上に出現して、餌である落ち葉の下に生息する。繁殖力が旺盛で、大量発生時は、1平方メートル当たり1000~3000匹に達した事例もあり、成虫になる直前の例年9月ごろから集団で繁殖地から移動拡散する。「今年は雨が降り続いたため、落ち葉の間が雨水で満たされてすき間がなくなり、定住しづらくなった。落ち葉もフンの大量付着が原因で餌として適さなくなったことが重なり、早期に移動したため、目撃例も増えたのではないか」
ヤンバルトサカヤスデは1983年に沖縄県で異常発生し、91年には鹿児島県の徳之島町で見つかった。鉢植えの観葉植物などとともに運ばれ、国内で繁殖したとみられている。落ち葉が豊富でサソリモドキなど天敵が少ない環境で生息域を広げ、鹿児島県だけでなく、宮崎県や静岡県、東京都の八丈島などでも見つかっている。
ヤスデは落葉のある所や日当たりが悪く湿気のある場所を好む。鹿児島市は土手の草払いなど地域で生育しにくい環境づくりを呼び掛けている。